刑事・少年事件
被疑者段階
刑事事件では、逮捕勾留される場合(身柄事件)には、警察による逮捕の場合、逮捕後48時間以内に検察官送致(いわゆる「送検」です。)され、送検から24時間以内に勾留の請求が裁判所にされます。
裁判所が勾留すると決めると、原則10日間、最大20日間、主に警察署の留置施設で身柄を拘束されてしまいます(再逮捕等があれば、勾留期間の合計は20日間よりも長くなります。)。
したがって、1事件につき23日間程度、自由を奪われて、取調室での取調べを断続的に受け続けることになります。
この逮捕勾留中に、どのような権利があるかといったことや、取調べを受けるにあたっての心構えなどを法律的にアドバイスできるのは弁護士だけです。
裁判になってから対応していたのでは手遅れになることも多々ありますから、できる限り逮捕勾留の早い段階で弁護士からアドバイスを受けることが、大変重要です。
特に、勾留を決めた裁判所が、接見等禁止決定(簡単に言うと、弁護士以外との面会が認めないと裁判所が決めることです。)をした場合には、逮捕勾留中には弁護士以外の誰とも会うことができませんので、会うことができるのは捜査機関を除いては弁護士だけになります。
また、道路交通法違反や交通事故などの場合には、逮捕勾留されずに在宅で捜査が進んでいくこともあります。在宅の場合も、警察・検察を相手として弁護活動をすることができるのは弁護士しかいませんし、捜査の流れなどの疑問に思われていることも弁護士であれば、アドバイスすることができます。
被告人段階(成人)
被疑者段階が終わり、検察官が起訴をした場合、裁判が始まることになります。
被疑者段階から弁護人としてご依頼いただいていた場合、弁護人としては検察官が起訴しない処分(不起訴処分)をするように弁護活動をしますが、そのような活動にも関わらず起訴されてしまうということも当然ながらあります。
ただ、起訴といっても種類があります。
まず、①略式命令で罰金の裁判を受けたときは、罰金を支払うことになります。
しかし、②正式裁判として起訴された場合、公開法廷で刑事裁判を受けることになります。
被疑者段階で逮捕・勾留され、身体を拘束されていた方が、起訴されることで当然に釈放されることはありません。通常は身体拘束がそのまま継続します。
起訴後も身体拘束が継続した場合に、身体拘束を解く手続きを「保釈」と言います。裁判官に保釈を申し立てて、裁判官の許可を得られれば、保釈されます。
ただし、保釈の許可を得るには様々な要件があります。
とりわけ保釈の許可を得るためには、保釈金(保釈保証金)を準備して裁判所に納める必要がありますが、この保釈保証金の準備ができることが保釈が認められるための最低限の前提になります。
保釈保証金は、裁判所が金額を決め、個々の事件で金額が異なります。そして、裁判所が決めた金額を原則として現金で納めなければなりません。
なお、保釈保証金は、逃亡するなどの没取(没収)の事情がない限り、原則として裁判が終了すれば全額返還されます。
次に、公判(刑事裁判)ですが、刑事裁判は被告人が罪を犯したかどうかを判断し、罪を犯したと判断された場合は刑罰の内容を決める手続きです。
弁護人は、刑事裁判の手続きのなかで、検察官が請求した証拠に対して意見を述べたり、被告人質問を行ったりします。
そして、必要な証拠を調べたうえで、判決が言い渡されます。
少年事件
少年の場合は、原則として刑事裁判とは異なる手続きを経て、少年院送致や保護観察などの処分が決まります。刑事裁判が主に罪を犯した人に対して刑罰を科すべきかという観点からの手続きであるのに対して、少年に関する手続きは「少年の健全育成」という少年法の保護主義の理念に基づいた手続きであるという特色があります。
成人の場合には逮捕後に勾留という身柄拘束手続きがありますが、少年の場合には勾留に代わる観護措置(警察署の留置施設ではなく、最初から少年鑑別所に入ります。)がとられることもあります。また、捜査機関が捜査を終えて犯罪の疑い有りと判断した場合には家庭裁判所に事件を全件送致しますが、その後は観護措置をとられます。
観護措置とは、少年鑑別所において、医学、心理学、教育学などの専門的見地から非行や犯罪に影響を及ぼした資質や環境上の問題を明らかにし、それらの問題の改善のために、適切な処遇の指針を示すための鑑別を行う手続きです。少年にとってどのような処分を行うことが、有効・適切かを判断することを目的としています。
また、家裁送致後には、家庭裁判所の調査官も、少年についてどのような処分を行うのが適切かの調査を行い、審判に際して処遇意見を提出します。
弁護士は、少年審判(成人の刑事手続きにおける裁判に相当)において、付添人(成人の刑事手続きにおける弁護人に相当)として関与します。
付添人は、少年と面会を繰り返したり、親や学校、職場などの少年をとりまく環境を調整して、非行にいたった原因の分析や再非行防止のための非行原因の除去や解消等の方法を模索します。付添人は、裁判所や調査官ではできない学校や親族との調整や被害弁償などの業務をすることになります。
そのうえで、付添人は、少年審判において、鑑別所の技官や家裁の調査官とは別の観点から、再非行の危険性が小さいことや、再非行の危険性が除去できたこと、社会内での生活によっても更生できることなどを主張します。
少年審判は、成人の刑事裁判とは異なり非公開の審判という手続きで審理が行われます。審理の結果、①保護観察、②児童自立支援施設又は養護施設送致、③少年院送致の3種類の保護処分がとられます。また、どの処分を下すかの最終判断の前に中間処分として、相当期間、少年を調査官の観察に付す試験観察という決定がなされることもあります。
弁護士に依頼していただいた場合、捜査の段階では、成人の場合と同じように取り調べに対するアドバイスや身体拘束を解くための活動を行い、家裁送致後は環境調整や被害弁償・示談により、少年にとって適切な処分がなされるよう活動します。