「医療法人」の設立方法,税務について勉強会をしました

令和元年11月27日,池田総合法律事務所の小澤が入っている異業種交流会内での勉強会で,医療法人の設立から税務までを,医療法人の立ち上げに多く関わっているメンバーの鈴木昌道税理士(名古屋市中区栄2-2-23アーク白川公園ビルディング4階鈴木税務計事務所)に講師をお願いして勉強会をしました。

医科の法人割合は約43%程度,歯科の法人割合は約15%程度であり,法人化率はそこまで高くありません。

現在,設立可能な一般的な医療法人は,基金拠出型医療法人のみであり[i][ii],医師・歯科医が,基金を拠出し(株式会社の資本金と違い,出資ではなく,法的性質としては貸付金のなかでも劣後債に近い位置付け),法人を設立します。

そして,法人解散時に,拠出した基金額以上の財産が法人に存在すれば,国庫や医師会などに最終的に帰属させられることになります。そこで,内部留保をしすぎないように財務管理を行っていくことが必要とのことでした。

また,医療法人には監事1名が必要ですが,法人理事長の2親等以内の直系血族,兄弟姉妹,配偶者は監事になれないことから,監事の担い手確保が難しいとのことです。この医療法人の監事には弁護士であれば就任することができるとのことですので,弁護士の潜在的な需要がこういったところにもあるのではないかと感じました。

税務面では,租税特別措置法26条を利用していて税務申告をしている場合,法人化をすると措置法26条が使えなくなり,その想定が必要とのことでした。具体的には,社会保険診療報酬が例えば2500万円~3000万円であれば,「社会保険診療報酬×70%+50万円」が,措置法26条により概算経費として認められるため,精神科クリニック等の設備投資等があまり必要の無いクリニックでは法人化による税務面でのメリットは無いとのことでした。

したがって,医療法人を設立するか否かは税務面も含めて十分なメリットがあるかどうかの十分な事前検討が必要不可欠とのことです。

加えて,医療法人の場合,法人登記をしたからといって,すぐに診察を始められるわけではなく,必要な書類をすべて整えたうえで保健所への届出,保健医療機関としての指定申請が必要になり,この点のスケジュール感がなければ,クリニックの開業スケジュールが遅延するおそれがあり,開業支援にあたって特に緊張感が伴う領域とのことでした。

 

医療法人の設立は以上のように比較的特殊な分野で,十分な知識・経験が必要な分野ですが,弁護士として,医療法人の設立時や,医療法人の設立後の法人運営でも,お手伝いすることも色々あると実感しました。

 

〈小澤尚記(こざわなおき)〉

[i] 平成19年の制度改正前までは,株式会社に近い出資額限度法人が設立できましたが,現在は設立できません。出資額限度法人は「当面の間」存続できることになっています。

[ii] 現行法による医療法人は,他に「社会医療法人」「特定医療法人」などがありますが,救急医療などを行う地域の大規模病院が主です。