コンピューターソフト仕様変更でトラブルとならないために
最近の企業活動には、さまざまな文書の作成管理、情報の管理と伝達、集積について、業務管理システムが必要です。コンピューターシステムの利用なしには一日も事が進まないのが実情で、大なり小なりその企業の業務に関して、コンピューターシステムのお世話にならざるを得ないところです。市販のアプリケーションを使うだけでは足らないという場合には、企画立案からカスタマイズされたシステムの基本設計、プログラミング、そしてテストのうえ完成、保守管理に至るまで、システムを開発することが必要であり、システム全体が企業活動を体現しているともいえます。
ソフトウエアの開発を依頼する場合、詳細な条件を記載した契約書があれば、契約の成立時期も、ソフト完成の時期も明確ということになりますが、開発対象が依頼者と開発を受託した事業者との共同作業により進行することが多いため、それが、準備的な段階なのか、契約した作業(債務)の履行の段階なのか、不明確になって、トラブルを生じることも少なくないようです。
①正式契約をしないのに作業を開始してしまった、②作業にあった契約形態になっていない、③契約に不備があるといったものが、主たるトラブルであると、経済産業省の情報システム・ソフトウエア取引トラブル事例集(2010年3月)では考察しています。
システム開発会社からの提案について、具体的な提案であるか、何についての承諾なのかを明確にしておくことが、望まれます。基本契約書を結んでおき、システム開発の各段階における作業の内容と責任分担を決めておく、個別のシステム開発がどのような手順で契約成立に至るのか、共通の認識にしておくことが肝要です。また、仕様の変更により、追加の報酬が問題になるケースも良くトラブルで見かけます。
当初の予定内容を変更する場合にも、変更提案書の交付と協議のうえ了解した記録を残しておく、協議が整わなければ契約は終了すること等をあらかじめ契約書に定めておくことは、大切なことですが、これがなかなか行われていないようです。備えあれば憂いなし。もう一度契約書をチェックしてみませんか。(池田桂子)