ペットに関する法律問題
1.はじめに
街を歩いていると散歩中の犬を見かけます。また、テレビをつけるとペットに関する番組を目にします。ペットは私たちの生活に欠かせない存在となっています。
これから2回に分けてペットに関する法律問題について解説します。
第1回目は、ペットを飼うことで生じうる問題です。第2回目は、ペットを扱う事業者等を取り巻く問題について解説します。
2.ペットを購入する際に起こりうる問題
購入したペットに病気や障がいがあった場合、買主はペットショップに対しどのような請求が出来るでしょうか。
ペットを購入する契約は、売買契約にあたり、売買の目的物に問題があった場合には、売主は契約不適合責任を負います(民法562条1項)。
すなわち、買主は、売主に対し、治療費の負担、別のペットとの交換、契約解除、代金の返還などを請求できる可能性があります。
ただし、買主が契約不適合を知ってから1年以内に売主に通知することが必要です。
3.ペットが人に怪我をさせた場合
飼い犬を散歩させていたところ、人に突然吠えたため、驚いた人が転倒して怪我をしてしまった場合、飼い主はいかなる責任を負うことになるでしょうか。
ペットの飼い主は、ペットが他人に危害を加えた場合、被害者に生じた損害を賠償する責任があります(民法718条1項)。したがって飼い主は、怪我を負った人に対し、治療費や慰謝料等を支払う義務があります。
ただし、飼い主が、「相当の注意」をもってペットを管理していたと認められる場合には、飼い主は責任を負いません。「相当の注意」とは、動物の種類や性質、管理の状況等の様々な事情によって判断されますが、「相当の注意」が認められるケースは中々少ないと言えます。
そのため、ペットを飼う際には、大きな責任を負う可能性があるいうことを忘れず、適切に管理することが必要です。個人賠償責任保険は、ペットが人に怪我をさせた場合も、基本的に補償の対象となるようですので、入っておくと安心です(ただし、保険加入の際には約款等で適用の有無をご確認ください)。
4.ペットが自動車等にひかれて怪我をした場合
飼い犬を散歩させていたところ、自動車が突然飛び出してきて犬に衝突し、犬が怪我をした場合、自動車の運転者に対しいかなる責任を問うことができるでしょうか。
飼い主は、まず犬の治療費を請求することが出来ます。仮に犬が死亡した場合には、時価相当額を請求することが出来ます。時価相当額は、犬の購入価格や平均寿命などを参考にして決められます。
一方、犬は法律上は「物」として扱われるため(民法85条、86条2項)、基本的に慰謝料は認められません。しかし、近年ではペットを家族同然に大切にしていたことによる精神的苦痛が慰謝料として認められる事例も見られるようになっています。
5.おわりに
ペットは家族同然の存在であることから、ペットに関する問題が生じた場合、当事者同士で話を進めようとすると、感情的になり話が縺れる可能性があります。お困りの際は、池田総合法律事務所までご相談ください。
(石田美果)