一旦決めた養育費の額の変更はできるの?

新聞報道によると、養育費の1人当たりの平均額は46,660円だそうで、3~5万円が通常の相場、現実に、別れた夫から養育費の支払いを受けている母親は19.7%にすぎず、実に80%の母子家庭が、父親から養育費の支払いを受けていないという実態にあります。

ところで、幸い養育費の合意が出来たとして、その後の事情の変化で、養育費が不足する、あるいは養育費の支払いが困難になった時はどうしたらいいのでしょうか。

養育費は、支払いの合意あるいは家庭裁判所(以下、家裁といいます。)の調停ないし審判が出されたときの、お互いの生活状況、経済事情や子どもの成育状態を前提としたものです。したがって、これらが変化すれば、妥当な養育費の金額も異なってくるのは当然で、民法も、そうした前提に立ち、実情に合わなくなった時には、変更の申出が出来、お互いの話し合いができなければ、養育費の変更のための調停、審判の申立をすることができる、とされています(880条)。

2013年の人口動態統計によると、4組に1組は再婚カップルということですので、再婚を例にあげて、養育費がどうなるのか、考えてみます。

 

(1)子どもの親権者である元妻が、再婚をしたとき

この時、もし、子どもが相手男性の養子となっていれば、相手男性が養親として第一次的な扶養義務を負います。相手男性の収入が十分であれば、元夫の扶養義務はなくなりますし、不十分な場合でも、元夫の従前の養育費の金額が減じられる余地が出てきます。

したがって、養子縁組がわかれば、元夫の方は元妻に、養育費の支払いの免除や減額の申し入れをし、認めなければ、家裁へ減額等の調停、審判の申立をすることが出来ます。

養子縁組の有無は、戸籍を確認しなくてはいけませんが、離婚しても、子どもさんとの親子関係がなくなるわけではなく、子どもの戸籍を取り寄せることができます。

子どもが養子となっていない場合は、相手男性は、子どもの扶養義務は負ってはいません。但し、相手男性は、元妻と扶養関係に立つので、相手男性の収入が多い時には元妻の収入等に変化がなくても、経済状態がよくなりますので、そうした面から、養育費が減額されることが考えられます。

 

(2)養育費の支払いをしている元夫が再婚をし、子どもができた場合

相手女性の収入が多い時は別ですが、仮に、元夫と比べてかなり低い、あるいは専業主婦である場合には、元夫は、養育費を支払っている子のほか、相手女性と子どもという2人の扶養義務を抱え、経済的な負担が増えることとなります。

したがって、元夫のその後の収入の変化、相手女性の収入の有無、金額等も考慮して、養育費を減額していく方向で、話し合いなり家裁での手続ということになります。

なお、養育費の減額が相当な場合でも、相手の了解を得ないで、自分だけの判断で、勝手に減額した金額しか支払わない場合、相手の方から給料等の差押えがなされたりして、勤務先にプライベートな事情が全てわかってしまいますので、注意が必要です。一度差押がなされると、退職するまで長期間差押が続くなどということにもなりかねません。

相手との間で減額の合意書を交わす、あるいは、相手が減額に応じないときは、家裁の調停、審判を経て、減額をするようにして下さい。                  (池田伸之)