中小企業とリース契約
1 はじめに
中小企業であっても,大企業であっても,複合機をはじめとした設備機器をリース契約で導入する事業者は多いと思います。
オペレーションリース契約であれば,税法上,賃貸借取引となり,リース料を支払うべき日において経費処理ができるという費用の平準化メリットがあります。また,中小企業でも,リース会社にリース物件の所有権が留保されるファイナンスリース契約では,オペレーションリース契約と同様,税法上,賃貸借取引として処理することができます。
このように費用の平準化をすることができる,貸借対照表上の資産に計上されずにオフバランスできるというのがリース契約のメリットとなります。
2 リース契約の特徴
リース契約の特徴は,ユーザー(賃借人),販売会社(サプライヤー),リース会社(賃貸人)の三者関係である点です。
従って,一般的に,ユーザーは販売会社を通じて,リース会社にリース契約を申込み,リース会社とリース契約を締結します。
3 中小企業でのリース契約トラブル
中小企業(株式会社,有限会社,社会福祉法人,医療法人等)は事業者であり,一般消費者と異なり,消費者契約法等の消費者保護のための法制度の適用がありません。
サプライヤーの営業担当が,ユーザーのもとを訪問し,必要な機器であるとしてリースでの機器の導入を勧められ,営業担当者が誤った説明等をした場合でも,消費者契約法の直接の保護は得られません。
また,最近はIT機器の導入営業もありますが,事業者側が十分に理解できないまま,営業担当者が必要というのを鵜呑みにしてリース契約の申込みをしてしまうこともあります。
この場合,営業担当者の営業行為には,ユーザーの錯誤(勘違い)を誘発するものや,詐欺にあたるものもあり,民法95条,民法96条で問題になる余地はありますが,リース会社は第三者に当たりますので,リース会社がユーザーの錯誤やサプライヤーの詐欺を知っていた場合(悪意)やリース会社に過失がなければ,リース会社に対して錯誤や詐欺を主張できない(対抗できない)ことになります。
従って,一度,リース会社との間でリース契約が締結されてしまえば,ユーザーはリース料を支払い続ける必要があります。
4 早急な申込みの撤回を
ユーザーは,サプライヤーを通じて,リース契約の申込みをし,サプライヤーからリース会社に申込みがあったことが通知され,リース会社が審査をして,契約締結に応じるか否かを判断します。
そこで,リース会社がリース契約の審査が終了するまえ(契約が締結される前)に,ユーザーからリース会社に対して契約申込みを撤回することで,リース契約締結に至ることを回避できる可能性があります。
池田総合法律事務所でも,サプライヤーとリース会社双方に内容証明郵便を発送し,リース会社に申込みの撤回を認めさせた事案もあります。
しかし,この申込みの撤回については,リース会社の審査終了前という限られた時間内で内容証明郵便などで意思表示をする必要があります。
このような極めて短時間での対応をするには,日頃からコミュニケーションを取っている顧問先の事業者様に限られます。
リース契約をはじめ,法的トラブルは事業を続けていく上では避けがたいものです。顧問弁護士であれば,早急な対応により,より良い解決を導ける可能性もありますので,顧問弁護士の活用をおすすめします。
池田総合法律事務所にご相談ください。
〈小澤尚記〉