中高年の結婚には「夫婦財産契約」をおすすめします

「夫婦財産契約」という言葉を聞いたことがありますか。

トム・クルーズが2012年に3度目の離婚をするに際して、婚前契約(プレナップといいます。)をしていたから、財産分与が安く済んだ(それでも12億円!前の奥さんのニコール・キッドマンとの離婚のときは90億円!?)といった芸能情報から、聞いたことがある人もいるかもしれません。

 

日本で民法の定める「夫婦財産契約」というのは、結婚にあたって、予め、夫婦の財産関係(婚姻費用の負担、財産の管理や処分、離婚にあたっての財産分与の方法、内容、分与の割合等々)について、夫婦間で取り決めをするということです。

 

民法は、この夫婦財産契約がなされなかった場合の夫婦間の財産関係についての規定を置いており(民法第760条~762条)、特に約束がなければ夫婦の共有財産と推定されることになります。民法は、夫婦財産契約をすることを推奨しているようにもみえます。

 

但し、この契約は登記をすることが前提となっていますが(登記がなくても契約は有効ですが、夫婦の一方が亡くなったあと、相続人との関係では、登記がなければこの契約の存在を主張できません。)、年間の日本全国の登記の件数は、毎年10件を切っており、殆ど普及していません。

 

普及しない理由については、(1)そもそもこうした制度があるということを知らない(2)結婚前に契約をして登記をすることが必要ということで面倒(3)結婚後に、変更や廃止はできず、硬直的(4)これから結婚をしようというときに、離婚の際の清算関係等決めたくないし考えたくもないという心理的抵抗等が考えられます。しかし、結構有益な制度です。

 

夫婦の財産関係に関する事情については、原則自由に定められます。もっとも、あまりに非常識な内容や、一方に過大な負担を課するようなものは、公序良俗に違反をして無効になる余地はあります。たとえば、お互いの財産分与を0とするということも契約可能です。ただ、結婚時のお互いの財産状況やその後の増減、結婚の期間、お互いの収入状況等によっては、無効とされる余地もありますが、契約がないとした場合の、財産分与の割合や内容と比較してズレがあれば無効ということではなく、大きくバランスを崩さなければ有効と考えるべきという意味で、夫婦財産契約の自由度は高いと思います。

 

0から財産を築いていこうとする若い夫婦には、先の見通しも立ちにくいので、夫婦財産契約については、あまり必要性はなく、逆に将来も強く縛ることになり、内容によっては有害な場合もありえます。しかし、資産家で比較的年齢の高い方が結婚される場合や、再婚で、それぞれに子どもがあって、資産も一定程度あるような場合には、遺言とともにこうした夫婦財産契約をして、将来の無用な紛争を防ぐことも考えた方がいい場合もあります。トム・クルーズは、2度目の離婚のときに高い勉強代を支払って、婚前契約の必要性を学びました。

 

もっとも、登記までするとなると、公示され、誰でもその内容を見ることができますので、知られたくない内容やプライバシーにかかわる内容にまで踏み込むかは、慎重に検討しなくてはいけません。

 

結婚にあたって、万が一将来、離婚するような場合、あるいは自分が亡くなったときにどうなるのか、という不安をもつのは、結婚を一時の熱情ではなく、冷静に建設的に考えていこうとするもので、健全なことであると思います。

中高年の結婚やそれぞれに前配偶者との間に子どもがいる場合には、相続も絡んで心配です。考えてみると、手続もむずかしいものではないので、ご検討をお勧めします。

 

当事務所ではこうしたご相談にものっておりますので、お気軽にご相談下さい。

(池田伸之)