令和に入って初めての会社法の改正~株主総会の運営や取締役の職務執行の一層の適正化~

会社運営に欠かせない会社法の改正への対応は、株主をはじめステークホルダーにとっても重要な視点です。平成時代の前半は規制緩和のニーズもあり、ほぼ毎年のように改正がなされました。今回の改正は、令和になって初めての改正ですが、5月から6月の株主総会シーズンを前に、おさらいしておきたいと思います。

何回かに分けて取り上げる予定ですが、今回は、まず、株主総会に関する重要な改正について、御紹介します。今回の改正では、株主総会に関して重要な改正が2つ行われました。

 

1 一つには、「株主総会資料の電子提供制度」です。定時株主総会に関して、株主に送付する招集通知などの資料のうち、一定の資料について、紙で送る代わりに、会社のウェブサイトなどに掲載することで株主に提供したこととする、という制度です(会社法325条の2)。

資料とは、①株主総会参考資料、②議決権行使書面、③437条の計算書類及び事業報告書、④44条6項の連結計算書類です。

 

書面投票制度と異なり、電子投票制度の採用は義務付けられてはいません(会社法301条2項は、「できる」と書かれています)が、デジタル情報社会の進行に伴い、増えていくものと思われます。会社としては、印刷や郵送のための時間や費用を節約することにもなります。

 

電子提供制度を採用する場合、定款で定め、登記をする必要があります。

また、株主総会の3週間前(又は招集通知を発した日のいずれか早い日)までにウェブサイトへの掲載を開始する必要があります。また、株主総会の日の3ケ月後まで掲載を続ける必要があります。EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子公開システムで、金融庁が公開している)において、有価証券報告書の提出を行うことで電子提供を代替することも可能となります。

 

注意すべきは電子提供制度を採用する場合であったとしても、招集通知は書面で発送する必要があることです。招集通知の発送期限は公開会社、非公開会社を問わず一律に株主総会の2週間前です。

また、重複投票がなされて混乱することがないように、書面投票と電子投票の両方がなされたときのルールを定め、会社側の恣意的な判断とならないように準備することも必要です。

 

今年、この制度を先取りして、実際の出席、書面での議決権行使に加えて、インターネットでの議決権行使も併せて記載した通知を送付した企業も多いと思いますが、この制度が導入されると、システムの整備など、総会の実務に大きな影響を与えます。例えば定款変更しておきながら電子提供措置を取らなかった場合には過料が課せられます(会社法976条19号)。この制度については、他の改正内容とは違って、施行日は、本年3月1日からではなく、公布日から起算して3年6か月を超えない日として政令で定める日から施行されることとなっています(2023年(令和5年)3月末)。

 

2 もう一つは、株主提案権のうち、株主が一つの株主総会で、自ら提案する議案の内容を会社の招集通知に掲載せよと要求できる権利(議案要領請求権)について、提案できる議案数が、今までは無制限だったのですが、今回の改正では10個までに制限されました。

 

10を超えるときの優先順位は、取締役が定めるものとされ、株主が優先順位を定めている場合には、取締役はそれに従って定めるものとされます。

なお、国会に提出された法案では、数だけでなく、不当な目的等による議案を制限する規定も提案されていたのですが、株主の権利保護の観点から、衆議院で修正され、削除されました。

 

次回は、改正の中でも重要な取締役に関する規律の変更について、取り上げます。

 <池田桂子>