会社法改正その2-第2の委員会制度の新設

現在の会社法では、監査の面では、監査役(会)設置会社と委員会設置会社の2つに機関設計されていますが、後者の委員会設置会社の普及は捗々しくありません。日本監査役協会の調査(H25.10.31)によると、委員会設置会社制度を採用しているのは、僅かに89社しかなく、(そのうち上場会社は57社)、一旦、委員会設置会社に移行したものの監査役(会)設置会社へ再移行した会社が61社あり、委員会設置会社は不人気なのが実情です。

社 外取締役への抵抗感、経営を監督するような能力を持つ人材を確保できない等、その不人気の理由はいろいろ考えられますが、委員会設置会社の場合、取締役の 選解任議案の決定権限を有する指名委員会、個々の取締役等の報酬に関する決定権限を有する報酬委員会と監査委員会が一セットとされ、しかも各委員会の過半 数が社外取締役でなければいけないことから、経営者の人事、報酬という勘所が、社外取締役に押さえられていることへの抵抗感が非常に強いのではないかと、 従来から言われています。

 

そのため、社外取締役の活用を促す意味で、指名委員会や報酬委員会の設置を義務付けず、監査役も不要(但し、会計監査人は必置)とする新しい制度として、「監査等委員会設置会社」という、現行の監査役(会)設置会社と委員会設置会社の中間形態のような、第2の委員会制度を設けるという法案が検討されています。これに伴い、従来の「委員会設置会社」は、「指名委員会等設置会社」と呼ばれて区別されることになりました。

 

この監査等委員会の監査等委員は、株主総会で他の取締役とは別の「監査等委員」という別枠の取締役として、直接選任されます。また、取締役会の一員として、取締役会で議決権をもち、任期は2年と他の取締役より長く、解任には株主総会の特別議決が必要である等独立性が保障されています。

 

監 査等委員会の職務権限としては、他の監査役(会)設置会社の監査役、指名委員会等設置会社の監査委員会と共通する権限として、取締役の職務執行の監査、監 査報告の作成、会計監査人の選任決議議案の決定、会社の業務、財産状況の調査、取締役の不正行為等の取締役会への報告義務、差止請求等があり、また、特有 の権限として、監査等委員以外の取締役の選任、報酬について意見を述べる場合にその内容を決定する権限を有しております。

 

さらに導入のインセンティブとして、取締役と会社との間の利益相反取引についての任務懈怠の推定規定(現行会社法423条3項)について、監査等委員会が事前にその取引を承認した場合は、適用しないという改正もセットされています。

 

社外取締役によるガバナンスへの抵抗感がある中、なんとか社外取締役を導入していこうとする苦労の現れですが、現行の委員会制度のハードルを下げるものとして一気に普及が進むのでしょうか。それとも中途半端なものとして,結局、利用されないものに終わってしまうのか、皆さんはどう思いますか。(N)