会社法改正に伴う事業報告書の記載事項の変更について

これまで、会社法の改正点について、役員報酬、会社補償、役員賠償責任保険のルール変更等の解説をしてきましたが、これらの改正に伴い、事業報告書に記載すべき事項について、会社法規則により定められています。

なお、事業報告書には、計算書類ではわからない定性的な情報を補足する役割があります。すべての株式会社が作成を義務づけられています。

 

第1.役員報酬等について

以下のような事項が、事業報告書への記載対象として定められています。なお、上場企業等の公開会社を前提としています。

 

1.会社役員ごとの報酬等の総額(業績連動報酬等、非金銭報酬等及びそれら以外の報酬等がある場合は、それぞれの総額)及び員数

具体的には、下表のような記載となります。

役員区分 員数(名) 報酬等の総額(百万円) 報酬等の種類別の総額(百万円)
業績連動報酬等 非金銭報酬等 その他報酬等
取締役 社内取締役 5 470 150 160 160
社外取締役 3 13 13
合計 8 483 163 160 160

 

2.業績連動報酬等に関する事項については、その算定の基礎として選定した業績指標の内容及びこれを選定した理由、その額又は数の算定方法及び額または数の算定に用いた業績指標に関する実績

これは、業績連動報酬等が役員に適切なインセンティブを付与するものであるかどうかを株主が判断するために必要な情報の開示を求めているものです。必ずしも、株主が開示された業績指標に関する資料等から業績連動報酬等の具体的な額や数を導くことが出来るような記載までが、求められているものではないとされています。

 

3.非金銭報酬等については、その内容

 

 

4.会社役員等の報酬等に関し、定款の定めや株主総会決議がある場合には、その定め又は決議の日、内容の概要及び会社役員の員数

 

5.取締役の個人別の報酬等の内容が、定款や株主総会の決議で具体的に定められていない場合には(取締役会で、その決定方針を定めなくてはいけません。)、決定方針の決定の方法、方針の内容の概要、個人別の報酬等の内容が、この方針に沿うものであると取締役会が判断した理由

 

6.取締役会から委任を受けた取締役等が、取締役の個人別の報酬等の内容を決定した場合には、委任を受けた者の氏名、地位及び担当、委任された権限の内容及び権限を委任した理由

従来から、取締役の報酬につき、株主総会から取締役会へ、取締役会から代表取締役への報酬の決定権限の委任といったことが行われてきましたが、そのプロセスを可視化し規制していくものです。

 

第2.会社補償、役員損害賠償保険に関する記載

役員等賠償責任保険や補償契約に関する事項についても、事業報告書に記載しなければならなくなりました。

また、これらの事項は、取締役等の選任に関する議案を株主総会に提出するとき、その参考資料としてその概要を記載することも求められています。

(池田伸之)