公正取引委員会『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』について
独占禁止法は優越的地位の濫用(2条9項5号)を規制し,下請法(下請代金支払遅延等防止法)は買いたたきも規制しているところです。
そして,公正取引委員会は,受注者から発注者への労務費の転嫁にフォーカスをあてた『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』(https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html)を令和5年11月29日,公表しています。
この指針では,公正取引委員会は,公正な競争を阻害するおそれがある場合には,独占禁止法及び下請法に基づき『厳正に対処』していくと表明していますので,今後の発注者・受注者との事業者間取引では注意を要します。
要点は,
①発注者は経営トップレベルで価格転嫁を受け入れる方針を決めて対応していくこと
②発注者は,受注者から労務費上昇分の取引価格の引き上げを求められいなくても,業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回など定期的に受注者との協議の場を設けること
③発注者は,労務費の上昇の資料を受注者に求める場合は,公表資料(最低賃金の上昇率,春闘の妥結額等)に基づき,受注者が公表資料を用いて提示して希望する価格は合理的な根拠があるものとして尊重すること
です。
受注者側は,上記の発注者側の反面になるのですが,指針では国・地方公共団体等の相談窓口に相談するなどして積極的に情報を収集して発注者との交渉に臨むこと,と記載されています。また,上記の指針では,コスト上昇分の価格転嫁についての特別調査の結果をもとに各業種の取組事例を紹介しています。
賃金の上昇は,政府が推進していることではありますが,発注者にとっても,受注者にとっても容易ではないものです。
労務費の転嫁等の取引条件等で困っている事業者の方は,池田総合法律事務所にご相談ください。
(小澤尚記(こざわなおき))