第5回 共有物の変更・管理に関する見直し

2021年の民法の改正により、2023年4月1日から、共有物の変更・管理に関するルールが大きく変わりました。

本コラムでは、その内容についてご説明します。

 

1 共有物の「管理」の範囲の拡大・明確化

これまでは、共有状態にある土地、建物に変更を加える場合、それが軽微な変更であっても、共有者全員の同意が必要でしたが、民法改正により、軽微な変更については、持分の過半数で決定することができるようになりました。

軽微な変更に当たる例としては、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の修繕工事が挙げられます。

 

2 共有物を使用する共有者がいる場合のルール

これまでは、一部の共有者が共有物を使用している場合に、他の共有者が共有物を使用することは事実上困難でした。

民法改正により、持分の過半数で管理に関する事項を決定することができるようになったため、共有物を使用する共有者がいる場合でも、共有物を使用する共有者以外の共有者に共有物を使用させる旨決定することが可能となりました。

なお、管理に関する事項の決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすときは、その共有者の承諾を得なければならないとされています。

この「特別の影響」とは、対象となる共有物の性質に応じて、決定の変更等をする必要性と、その変更等によって共有物を使用する共有者に生じる不利益とを比較して、共有物を使用する共有者に受忍すべき程度を超えて不利益を生じさせることをいい、その有無は、具体的事案によって判断されます。

例えば、A、B、Cが各3分の1の持分で建物を共有している場合において、過半数の決定に基づいてAが当該建物を住居として使用しているとします。Aが他に住居を探すのが容易ではなく、Bが他の建物を利用することも可能であるにもかかわらず、BとCの賛成によって、Bに建物を事務所として使用させる旨を決定するといったケースです。この場合、Aが承諾しなければ、Bに建物を事務所として使用させるといった決定は出来ないということになります。

なお、共有物を使用する共有者は、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います。

また、共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければなりません。

 

3 賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理

共有者の中で賛否を明らかにしない共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができます。

例えば、A、B、C、D、E共有(持分各5分の1)の砂利道につき、A、Bがアスファルト舗装をすることについて、他の共有者に事前に連絡をしたが、D、Eは賛否を明らかにせず、Cが反対した場合には、AとBは裁判所の決定を得た上で、アスファルト舗装をすることができます。

ただし、変更行為や賛否を明らかにしない共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)は、決定することができません。

なお、所在等が不明の共有者がいる場合も、裁判所の決定を得て、同共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えることができます。

また、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができます。

 

4 共有物の管理者

旧民法には共有物の管理者に関する明文規定がありませんでしたが、民法改正により、共有物の管理者を選任し、管理を委ねることが出来るようになりました。

管理者の選任・解任は、共有物の管理のルールに従い、共有者の持分の過半数で決定します。共有者以外を管理者とすることも可能です。

選任された管理者は、管理に関する行為をすることができますが、軽微でない変更を加えるには、共有者全員の同意を得なければなりません。

 

5 裁判による共有物分割

旧民法では、裁判による共有物の分割方法として、現物分割と競売分割が挙げられており、裁判所はまず現物分割の可否について検討した上で、現物分割が困難な場合に競売分割を命じることができるとされています。

しかし、賠償分割、つまり共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を金銭で支払わせる方法については明文の規定がありませんでした。

民法の改正により、裁判による共有物分割の方法として、賠償分割が可能であることが明文化されました。

また併せて、①現物分割・賠償分割のいずれもできない場合、又は②分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがある場合、に競売分割を行うこととして、検討順序を明確化しています。

 

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(石田美果)