刑事弁護①

刑事事件では,逮捕・勾留された直後,できる限り早急に弁護士と会い,弁護士からアドバイスを受けることが非常に重要です。

 

刑事事件では,逮捕勾留される場合(身柄事件)には,警察による逮捕の場合,逮捕後48時間以内に検察官送致(いわゆる「送検」です。)され,送検から24時間以内に勾留の請求が裁判所にされます。

裁判所が勾留すると決めると,原則10日間,最大20日間,主に警察署の留置施設で身体を拘束されてしまいます(再逮捕等があれば,勾留期間の合計は20日間よりも長くなります。)。

したがって,1事件につき23日間程度,自由を奪われて,取調室での取調べを断続的に受け続けることになります。

例えば,えん罪事件では,本当は無実の人が罪を認める自白をしてしまうということが起こります。

これは,取調官以外に会話する人がいない中,数週間にわたり,取調室という密室で,取調官の取調べを受け続けると冷静な判断ができなくなり,楽になるためには自白してしまおうと考えてしまうためです。また,えん罪事件では,取調官から自分自身や家族の人格を否定するような発言や,志布志事件(踏み字事件)のように家族の名前が書かれた紙を無理矢理踏まされるという常軌を逸した取調べが行われることもあり,自白に追い込まれていきます。

本当はやっていないが,ここで自白してしまっても,裁判になったら裁判官は本当のことは分かってくれるだろうと考える方もいます。そこで,取調べが終わって,裁判(公判)になったとき,実はやっていなかったと自白を覆そうということが起こってきます。

しかし,現在の日本の刑事司法手続のなかでは,一度してしまった自白を無かったことにすることは法律上,非常に困難です。

本当にやっていないのであれば,何があっても自白するはずは無い,自ら進んで自白したのだから有罪であると考えがちなのは,一般の方も裁判官も同じです。

 

この孤独な逮捕勾留中の取調べに対し,どのようなことを取調べられていて,それに対してどのような権利があり,取調官の意図を解説し,取調べを受けるにあたっての心構えなどを法律的にアドバイスできるのは弁護士だけです。

また,取調官に対して,必要な抗議,申入れをして,適正な取調べが行われるよう求めることも弁護人にしかできません。

裁判になってから対応していたのでは手遅れになることも多々ありますから,できる限り逮捕勾留の早い段階で弁護士からアドバイスを受けることが,大変重要です。

特に,勾留を決めた裁判官が,接見等禁止決定(簡単に言うと,弁護士以外との面会が認めないと裁判所が決めることです。)をした場合には,逮捕勾留中には弁護士以外の誰とも会うことができませんので,会うことができるのは捜査機関を除いては弁護士だけになります。

また,そもそも勾留を決めた裁判所の判断に対して,法的に争っていくこと(「準抗告」といいます)ができるのも弁護士だけです。

さらに,逮捕・勾留の後,刑事裁判にするかどうかは検察官が判断します。そこで,被害者がいる事件であれば被害弁償をしたり,被害者がいない事件でも親族が監督するといったことを的確に検察官に伝えて,不起訴とするように検察官に働きかけるのも重要な弁護活動です。例えば,池田総合法律事務所では,殺人未遂事件で,被害者と示談することで不起訴処分となり,刑事裁判に至らなかった案件もありました。

 

また,道路交通法違反や交通事故などの場合には,逮捕勾留されずに在宅で捜査が進んでいくこともあります。在宅の場合も,警察・検察を相手として弁護活動をすることができるのは弁護士しかいませんし,捜査の流れなどの疑問に思われていることも弁護士であれば,アドバイスすることができます。

 

刑事事件でお困りの方は,池田総合法律事務所までご相談ください。

〈小澤尚記〉