創業の「すすめ」
定年が65歳に延長されたとしても、日本人の平均寿命は男性が80.21歳、女性が86.61歳と世界最高水準にあり、健康寿命(健康上の問題なく日常生活が送れるまでの年数)は、男性71.19歳、女性74.21歳と、定年後6~9年もあります。
経済的な必要性という面だけでなく、自己実現という面から、定年後もさらに何らかの仕事をしてみたいと考えるのはごくごく自然です。宮仕えの身から離れて①今までの仕事上で培ってきた知識、経験を生かして独立して仕事をしたい②全く違う領域の仕事や趣味の世界に通じる仕事をしたいという気持ちを持つ方も、いらっしゃるのではないかと思います。あるいは、③会社勤めをして一定の経験も積んだので、その経験やコネを生かして、この際、思い切って独立したいと考える現役の人も増えてきているのも事実です。
ただ事業をやりたいからといって、血気にはやって創業しようとして銀行を訪ねてもお金は貸してくれませんし、また、退職金をつぎ込んで事業に手を出しても、すぐに営業資金、固定費等で消えて無くなってしまうということにもなりかねません。
大事なことは、趣味や願望の延長ではなく、しっかりとした「事業性」の見通しが立てられるかどうかです。
勿論、将来のことですので、不確実なことはありますが、全くの無計画、いきあたりばったりでやり始めても、よっぽど運命の女神の気まぐれに恵まれない限り、失敗します。
事業性とは、採算がとれること、営業利益を出せることで、そうした計画(事業計画)を立てること、事業計画書という書面を作成することが創業の出発点です。
こうした分野で仕事をしてこられなかった方々については、事業計画といっても具体的なイメージは持ちにくく、事業計画書といっても、何をどのように計画して作成すればいいのかピンとこない方も多いと思います。
具体的には、ご自身で出来ない場合には、経営コンサルタント等に相談をしながら、進めていくことになりますが、「経営コンサルタント」という国家資格はなく、誰でも名乗りは出来ますので、信用できるのかということが不安材料です。商工会議所や自治体、国の出先機関等で相談に乗ってもらえば、一定の信用もおけ、最小限の費用負担で、こうした相談を受けることができます。こうした相談を繰り返す中で、創業に向けて、ぼんやりしていたイメージが具体的な絵に変わっていくものと思います。
こうした公的な支援制度があまり知られていないのが実情です。ここでは愛知県の行っている創業支援の取り組みについてご紹介します。
愛知県には「あいち産業振興機構」という公益財団があり、総合的に中小企業支援の施策を行っており、その一つとして、「新事業の支援」があります。これについては、「創業プラザあいち」という窓口があり(名駅ウインクあいち14階、電話715-3075、http://www.aibsc.jp/tabid/148/Default.aspx)、創業支援の専門家による相談や創業準備スペースを無料で提供しています。
具体的な創業イメージが固まっていない人については、専門のセミナーとして20回の「あいち創業道場」が設けられ、経営・財務の基礎、情報収集、分析方法、営業プレゼンの方法等創業等にあたって知っておくべきことを学ぶことが出来ます(20回で20,000円)、創業後についても、販路拡張支援やビジネスマッチング交流会による支援、中小企業支援ファンドによる助成や機械設備の低利によるリース支援等も行っています。
国(中小企業庁)も創業にあっては、各種の支援をしており、これらを活用していけば、たいした金銭的な負担もなく、また、一定水準以上のコンサルを安心して受けられるもので、創業へのスタートにあたって活用しない手はないと思います。 (池田伸之)