商標について 4 ~商標とフランチャイズ契約~

1 はじめに

3回にわたって、商標の制度や判例について説明してきました。今回は、商標権の保護が重要な役割を担う一例として、フランチャイズ契約を取り上げます。

 

2 フランチャイズ契約と商標

フランチャイズ契約とは、フランチャイザー(コンビニチェーンの本部をイメージしてください)がフランチャイジー(コンビニ店舗の各店長さんをイメージしてください)に対して、特定の商標等を使用する権利を与えるとともに、フランチャイジーの事業や経営についてノウハウを提供して指導や援助を行い、それらの対価をフランチャイジーがフランチャイザーに支払うことを内容とする契約です。

フランチャイジーは、フランチャイズ契約によって、自身のサービスや商品にフランチャイザーの商標を付けることが許されます。フランチャイザーの知名度、信用力、集客力をフランチャイジーが利用するうえで商標は重要な機能を担います(自他識別機能、出所表示機能、品質保証機能、広告宣伝機能などについては、第1回の記事を参照ください)。一方でフランチャイザーは、自身の知名度、信用力や集客力を維持しなくてはなりませんから、商標の価値・ブランドイメージを維持するためにフランチャイジーに強い統制・コントロールを及ぼす必要があります。

そのため、フランチャイズ契約の中には商標権の使用に関する詳細な条項が置かれます。具体的な条項としては、商標権がフランチャイザーに帰属することの確認に始まり、使用目的の限定、使用方法の遵守、改変の禁止、第三者による侵害・違反事実の通知義務、フランチャイズ契約終了後の使用中止や原状回復、違約金の定めなどです。

以上のように、フランチャイザーにとって、その知名度等を適切にフランチャイジーに利用させるためには、商標権は使い勝手のいいツールです。フランチャイズ展開を検討する事業者は、早めに商標登録をしておくことをおすすめします。次項では、商標登録を怠ったままフランチャイズ展開を進めることのリスクについて説明します。

 

3 商標登録を怠った場合のリスク

フランチャイズ展開が始動したばかりの段階では、商標の出願を念頭に置いていないケースもあるでしょう。商標権の出願・登録を怠ったままでいると、別の商標登録を得ている第三者から、「同一の商標」や「類似の商標」などとして警告を受け、商標の使用差し止めや損害賠償請求を提起されるおそれがあります。

そのような場合、様々な反論が可能でしょうが、費用や労力を投じる必要がありますし、こちらの商標の使用が別の商標権を侵害していると裁判所に判断された場合には、商標権者から商標使用権の設定をうけて対価を支払って従前の商標の使用を続けるか、従前の商標の使用を諦めなくてはなりません。フランチャイズ展開が進んだ段階でそのような事態に到れば、チェーン全体の損害は大きなものとなります。商標登録をしないままフランチャイズ展開を進めることは事業にとって大きなリスクです。

フランチャイズ展開を考えるならば、商標登録は避ける事のできない必須のステップです。まず、自身の商標と類似する商標がないかの調査を行い、次に第三者の商標権の侵害がなければ商標出願の手続を進めます(商標登録手続は第2回でも説明しましたので参照ください)。類似性の判断は、判例などを元に検討する必要があるので、専門家に依頼した方が確実です。

また、商標登録に際しては、将来の事業計画を検討しておくことも必要です。例えば、飲食店の場合、役務商標(サービスマーク)だけで足りるようにも思われますが、将来、商品の販売(テイクアウトや冷凍食品)をも視野に入れる場合には商品商標の申請が必要な場面もあり得るでしょう。どの区分で申請するか等についても、専門家のアドバイスを受けるべきだと考えます。

 

4 おわりに

池田総合法律事務所・池田特許事務所では、商標を利用したフランチャイズ展開などのビジネススキームについての法的サポートもさせていただいております。商標登録や知的財産を中心としたビジネス法務についてご相談がありましたら、池田総合法律事務所・池田特許事務所までご連絡ください。

 

山下陽平