増えている相続財産清算人制度の利用
1 どのような制度か
少子化、非婚化の進行を背景にして、亡くなった時点で相続人がいないということが増えています。空き家など管理が必要な遺産が放置されて、近隣に迷惑を及ぼす危険なども、社会問題として時折取り上げられることもあります。
こうした場合に活用される制度があります。相続財産清算人は、相続人がいない場合(被相続人の戸籍上相続人の存在が認められない場合)や相続人全員が相続放棄をしてしまった場合に、管理を必要とする遺産があれば、亡くなった人の財産を管理し清算する業務を担う役割を果たします。従前は相続財産管理人と呼ばれていましたが、令和5年に名称が変更されました。
誰にも相続されない財産は最終的に国庫に帰属しますが、戸籍上相続人がいない場合でも実際に相続人が存在しないことを確認したり、遺産に債務があった場合には債権者の立場を保全して、債務を返済したりする必要があります。そこで、相続人がいない場合、放置しておくことはできませんので、被相続人の財産は法人とみなして、債権者などの利害関係者から家庭裁判所に相続財産清算人の選任を求め、選任されると、清算人が清算手続きを行っていきます。
2 相続財産法人化から国庫帰属までの手続きの流れ(民法951~959条)
① 相続財産清算人選任の申立て
選任請求をするのは債権者や受遺者なので利害関係者、あるいは検察官です。家庭裁判所が清算人を選任すると公告されます。公告期間が定められ、この間に相続人が判明しないと、債権者等は弁済の請求ができます。
従前、相続人の捜索の公告は、相続債権者・受遺者に対する請求申出の後に行われていましたが、民法改正により、令和5年4月1日以降の選任事案では、清算人選任の公告とまとめて同時に相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告を行うことになりました。
② 相続人探索の公告 6ケ月以上の期間で定められます。
③ 相続債権者・受遺者に対する請求申出 2か月以上の公告。
④ 債務の弁済
⑤ 特別縁故者への分与
なお、内縁関係にあったとか療養監護に尽くしたといった事情で被相続人と特別な関係にあった者であると、家庭裁判所に認められることがあれば、特別縁故者として、相続財産の一部や大半を承継することができます。特別縁故者の申立ては、相続人の探索の公告機関の満了後3ケ月以内です。
⑥ 国庫への帰属
3 税金の扱いについて
相続財産法人には、被相続人の納税を行う業務も発生します。所得税、固定資産税などの支払いが発生している場合には、それも清算されます。
4 被相続人の財産に不動産がある場合、また共有不動産の場合
被相続人の財産の中に不動産が場合には、相続人不存在による所有権登記名義人氏名変更を行うことがあります。この登記は、選任された相続財産清算人が登記申請人になって申請します。相続財産清算人が管理する不動産を売却するには、家庭裁判所の許可(審判)を得て売却します。
共有者が死亡した場合は、その持分は、他の共有者の持ち分となります(民法255条)。但し、特別縁故者が財産の分与を認められた場合には、縁故者が優先することになります(判例とこれによる通達あり)。
5 相続人がいない場合には、生前に対応を!
相続人がいない場合、遺産は第三者によって分配や処理がなされることになります。自分が納得できる財産の行方を生前に決めておくことが望まれます。
遺言や民事信託の活用を考えておくことも大切です。
次回以降、こうした話題を取り上げます。こうした問題に関心がおありでしたら、お気軽にご相談ください。
<池田桂子>