大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第4回~

前回は、家賃の滞納が発生したときに、どのような手順を踏んで回収を進めていくべきかについてご説明しました。

今回は、家賃の回収が出来なかった場合に、借主に明渡しを求める方法についてご説明します。

 

1.賃貸借契約の解除

(1)借主に明渡しを求めるには、まずは占有(建物や部屋を使っている状態のこと)の根拠となる賃貸借契約の解除をすることが必要です。

そこで、内容証明郵便で借主に対し、「〇年〇月〇日までに未払賃料〇円を支払うこと、支払いがない場合は、改めて通知することなく、債務不履行により賃貸借契約を解除する」旨を通知します。

内容証明郵便は、文書の内容、差出人、及び名宛人を公的に証明するためのものです。これ自体に特別な法的効力はありませんが、後に裁判等紛争に発展した場合には、有効な証拠となります。内容証明郵便が借主に配達されたことを証するため、送付の際には配達証明付にしておきます。

(2)上記内容証明郵便で設定した期限までに借主から支払いが無い場合は、借主に対し、賃貸借契約解除を理由に明渡しを求めることになります。

借主に直接明渡しを求めても退去をしない場合には、裁判を起こすことになります。

裁判をした場合にかかる期間は、借主が争ってこなければ3か月程度で判決が出る場合もありますが、通常は半年~1年程度かかります。

裁判では、明渡しに加え、未払いの賃料と明渡しまでの賃料相当損害金の支払いを併せて請求することができます。

 

2.強制執行による強制退去

裁判で、明渡しを命じる判決が出た場合は、借主は自分から退去をする場合が多いと言えます。これは仮に退去を拒んだとしても、後述する強制執行の手続があり、最終的には退去を拒むことが出来ないからです。

仮に借主が出ていかない場合、判決があるとはいえ、貸主が実力で借主を追い出すことは出来ません。このような行為は自力救済といい、違法な行為であり、民事上の損害賠償の対象となるだけでなく、刑事上も罪に問われる可能性があります。

借主を適法に退去させるには、訴訟手続とは別に強制執行手続が必要となります。

強制執行は、裁判所に申し立てて行います。裁判所の執行官は、借主に対し指定の期日までに明渡しをするよう求める催告書を送付します。借主が指定の期日までに明渡しをしない場合、執行官が家具、家財などを撤去し、鍵を交換することで、強制的に明渡しを実現します。

強制執行にかかる費用は、原則として貸主が負担することになります。執行官や業者の人件費、出張費、家財家具の運搬費など様々な費用がかかります。

 

3.以上のとおり、借主に明渡しを求めるには、法的手段が必要となり、時間も費用も費やすことになります。

借主が任意に立ち退かない場合には、その後の手続きも見据えたうえで、段階的に手段を講じていく必要があり、早めの弁護士への相談が有効です。池田総合法律事務所は、このようなご相談にも対応しておりますので、お困りの際には、是非ご相談ください。

(石田美果)