大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第6回~

入居者(借主)が亡くなった場合の法的対応はどうしたらよいか?

 

 アパート経営をされている大家の場合、借家人が亡くなった時には、どのような法的な処理が必要となるでしょうか。

 賃借権も財産的権利の一つですし、また、家財道具も借主の所有していたものですから、勝手な処理はできません。亡くなった人の相続が開始していますので、遺言があれば、それに従い、なければ、借主の法定相続により遺産分割により最終的に相続する人が決定するまでは、相続人が複数いれば準共有という状況にあたります。

 借主が死亡する前に生じていた未払いの賃料支払い債務は、可分債務として当然に分割されて、共同相続人が各自の相続分に応じて支払うことになります。また、死亡後に部屋を明け渡してもらえない状況が続けば、共同相続人それぞれに対して、債務の不可分性から、全員に対して、相当期間を定めた催告や契約解除の意思表示をすることになります。死亡後の賃料は不可分債務として、全額をそれぞれに支払い請求することができます。

 また、相続人全員に賃貸借契約の解除もしくは解除の意思表示をすることになります。

 

 賃貸借契約では、借主が死亡しても、賃貸借契約は終了しません。従前の経過で借主に賃料の滞納があれば、解除事由があるといえますが、そうでないとすれば、死亡によって解除とはなりませんので、相続人の把握に努めるとともに、賃貸借契約を継続するのか否かを確認する必要があります。

 

 相続人の調査を行い、相続人の契約の継続か解除かの意向を確認します。

 相続人が夫婦の場合は、契約の継続を望まれることもあるでしょう。相続人がいない場合でも、内縁関係にある人や事実上の養子の関係にある人で同居していた場合には、同居者に賃貸借契約の賃借人の地位が承継されることがあります(借地借家法36条1項)。この場合、賃貸人としては、配偶者等に承継されることを前提として、賃貸借契約の権利義務を扱う必要があります。承継する人を確認し、承継する契約内容を確認しておかれた方が望ましいといえます。

 

 入居者が高齢者で一人暮らしという場合、入居者の死亡によって、孤独死による片付け等が進まず、近隣からの苦情も心配されるケースもあると思います。まずは、入居者の家族として知りえる人や連帯保証人に連絡を取り、連絡が取れなければ、警察に連絡をして、現場確認(安否確認)をします。現場確認は、家族等の立ち合いを求め、それが求められない場合は警察に立ち会ってもらいます。貸主だけで室内に立ち入ることは避けましょう。

 遺体の引取り、さらには、室内の清掃や汚損箇所の修復などの原状回復の作業を早期に実施し、作業を進めるにあたっての見積もりなども場合によっては取って、関係者に納得してもらいつつ、進める必要があります。

 ケースによって御心配事も異なると思いますので、気軽にご相談いただけるとよろしいかと思います。

 

 池田総合法律事務所では、こうした事件を多く取り扱っておりますので、賃借人が死亡して、契約関係の後始末等でお困りの家主様は、是非、御相談下さい。

   <池田桂子>