孤独死後の法律問題

家族に看取られることなく単身で死を迎えることを孤独死と総称するようです。単身世帯の増加と高齢化が相まって、孤独死は珍しいものではなくなりました。警察や住居不動産の管理者・貸主からの突然の連絡で、ご親族が知るところとなるようです。今回は、突然そのような連絡を受けたご親族が直面する法律問題について説明します。

孤独死の場合はどうしても発見が遅れます。暑い時期にはご遺体の傷みが激しく、住居内外の衛生環境等にもろもろの支障が生じます。そのような場合、貸主等からご親族に対して、即時に特殊清掃の手配についての判断を迫られることがあります。周囲への影響を最小化するために、特殊清掃を手配せざるを得ないこともあるでしょう。

特殊清掃には汚れた家財の処分を伴うケースがあります。相続財産を処分してしまうと、相続放棄ができなくなってしまうという単純承認の制度(民法921条)があり、家財を処分していいのか、という問題があります。高価品であれば格別、汚れた家財は売却しようにも値が付かないので財物の処分にあたらず、単純承認とされるケースは少ないでしょう。安全を期すならば処分品のリストの作成を業者に依頼する、相続人になりうる方以外(例えば法定相続人の配偶者)を特殊清掃の契約者にする等の対策が考えられます(高価品があれば別途保管が必要)。

特殊清掃の問題が解決すれば、あとは注意すべき点は通常の相続と同じです。原則として相続開始を知って3か月以内に相続放棄(民法915条)するかを検討する必要があります。なお、相続放棄をするだけでは、相続財産管理義務を免れることができない点に注意が必要です(民法940条)。この義務を免れるためには、費用を負担して「相続財産管理人」(民法952条)の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。相続財産管理人は、各種資産を売却してお金に換えて負債の支払いに充てますが、特殊清掃費用や葬儀費用を立て替えた場合には、相続財産管理人に対して支払いを求めることができます。

以上は、あくまで一般論で、ケースバイケースの事情もあるでしょう。お近くにご親族が孤独死された方がおられたら弁護士に相談するようお勧めいただければと思います。

山下陽平