広告宣伝にセレブの顧客誘引力を利用することは可能?!

200ページの女性雑誌に、ピンク・レディーが踊っている写真を使ってダイエット法を紹介した記事が3ページ掲載され、無断掲載がパブリシティ権(氏名・肖像から生まれる価値を支配する権利)を侵害したとして争われました。

 

記事は、ダイエットの効果を見出しに掲げ、イラストと文字によって、これを解説するとともに、子どもの頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するもので、写真撮影はかつて出版社が本人の承諾を得て撮影したものでした。

 

この事案で、平成24年2月2日の最高裁判決は、氏名や写真などによって人を惹き付ける力を有する著名人の場合、その価値を商業的に独占利用できるパブリシティ権を認めたのですが、その一方で、権利侵害について、3つの類型を上げて、これらに該当しない場合には販売促進力の利用が主目的ではないと判断して、ある意味、一定範囲で、有名人の写真等の自由利用を認めたともいえるように読めます。また、「肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もある」として、一定限度で制限をされることを認めました。

 

3つの類型とは、

①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合

②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合

③肖像等を商品等の広告として使用する場合

 

で、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合には、パブリシティ権を侵害するものとして違法になると判断しました。

 

人ではなく、いわゆる物のパブリシティ権については、最高裁は、競走馬のパブリシティ権を認めず、「競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても、物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき、法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではない」としていました。

 

補足意見では、「専ら」の解釈について、「この文言を厳密に解することは相当ではない」と述べています。いずれにせよ、著名人の写真を使用するときには、利用目的を検討して、適用除外として例示された報道、論説、創作物等に該当するものであっても、慎重であるべきだと思われます。(池田桂子)