廃棄物処理③ ~契約書について2~
産業廃棄物の処理においては、運搬と処理は分けて考えなければなりません。つまり,処理を委託するには,排出事業者は,収集運搬業者と処分業者と,それぞれ個別に委託契約を結ばなければなりません。
これは,産業廃棄物を回収に来た収集運搬業者に処理まで丸投げすると,収集運搬業者が処分業者に持ち込まずに,そのまま山奥などに産業廃棄物を不法投棄する可能性がありますので,排出事業者は責任を持って処分業者とも契約書を締結し,産業廃棄物の処理まで見届けることが求められているためです。
そこで,産業廃棄物の処理を委託するにあたっては,「排出業者・収集運搬業者間の委託契約」と「排出業者・処分業者間の委託契約」の2本の委託契約を結ぶことになります。
従って,契約書も2種類作成するのが望ましいのですが,実務上は,それぞれ法律上記載すべきことが記載されていれば,一つの契約書にまとめても問題はないと考えられています。
なお,いずれの場合も,排出事業者が日常的に接触するのは収集運搬業者になると思いますが,排出事業者としては,処分業者と独自に接触するなどして,処分業者の会社としての実態や処分能力などを十分に把握しておく必要があります。
廃棄物処理法12条第7項は,排出事業者に処理状況に関する確認を努力義務ながら求めており,具体的には事業の用に供する施設を実地に確認する方法が考えられるとされ(平成23年2月4日環境省廃棄物対策課長・産業廃棄物課長通知),場合によっては実地調査も必要になります。
仮に,委託先業者が不適切な処理を行った場合,現地確認をしなかった排出事業者には措置命令が出されることもありえます(廃棄物処理法第19条の6第1項第2号)。
産業廃棄物処理の委託契約の内容は,法律が様々な制約をしています。また,排出事業者が責任を負わなければならないリスクもあり,これは廃棄物処理法違反という重大な法令遵守義務違反(コンプライアンス違反)になる可能性をはらんでいます。
廃棄物処理にかかわる事業者が,法令を遵守しながら事業活動を円滑に進めるためには弁護士の関与が不可欠になります。
産業廃棄物の処理にお困りの方,法的に問題が無いか不安な方,廃棄物処理法について知りたい方は,池田総合法律事務所までご相談ください。
〈小澤尚記〉