廃業の前に事業承継の検討を!

中小企業は、我が国の企業数の99%を占め、2020年には、中小企業経営者の主要な年齢層が66才前後となると言われています。また、あるシンクタンクの2016年に公表した調査では、60才以上の経営者の半数が廃業を予定し、その理由として、後継者不在を挙げる経営者が3割近くとなっています。

他方、廃業の理由として、「当初から自分の代でやめようと思っていたから」という回答が最多数の回答で、実に、4割近くにも達しています。実際、会社の資産を売却して、従業員の退職金や金融機関からの借金を支払って多少でも残っていればよし、と考えている経営者の方もいらっしゃいますが、こうした手法は、最後の最後に考える方法で、一旦立ち止まって、事業を生かして誰かに承継してもらうことも考えられてはどうでしょうか。

従業員や仕入れ先等、会社の周囲にはそれで生活を支えている関係者も多く、また、特別な技術やノウハウをもつ場合に、これを消滅させてしまうことは、社会的にも損失というべきです。

事業の承継というと、株式を承継させて代表者を交代することを考え、自分の子ども等を対象にその可能性をさぐってみるという、親族内での承継が典型的ですが、それに尽きるものではありません。従業員による承継M&A等による社外の事業体への承継といった手法もあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。また、事業承継を円滑に進めるために、法律が改正、整備され、種類株式(議決権制限種類株式、取得条項付種類株式等)を利用した方法、後継者の株式取得による税負担をなくしたり、他の親族からの遺留分行使に一定の枠をかけることが出来る制度等が用意されています。

また、最近では、信託を利用した事業承継の方法も利用され、先代経営者や後継者の意向にそった財産や経営権の移転が可能となっています。こうした中小企業の事業承継をサポートする支援機関も広がっており、また、中小企業庁の肝入りで、「事業引継ぎガイドライン~M&A等を活用した事業承継の手続き~」という手引きも公表されており、一人で0から考える必要は全くありません。

何から手をつけてよいかわからないという方もいらっしゃいますので、まず自社の分析を第三者に行ってもらうのはいかがでしょうか。分析をデューディリジェンスといいますが、自社を客観的に捉えられます。

池田総合法律事務所では、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験があるとして国の認定を受けた支援機関(認定支援機関といいます。)の資格を有する者が複数名所在し、こうした中小企業の事業承継についても、税理士、公認会計士等の専門士業とも連携して業務を行っておりますので、お気軽にご相談下さい。また、当事務所のホームページにも、「事業承継」を特集した記事もありますので、こちらもご参考にして下さい。

https://ikeda-lawoffice.com/law_cat/business/)(池田伸之)