従業員の過労死で社長個人にも責任が・・
会社の責任と社長の責任は別です。
連帯保証等をしない限り、会社の買掛金その他の債務について、社長個人が責任を問われることはないというのが通常の理解です。
しかし、会社法には、取締役が、その義務を執行する上で、悪意または重大な過失があって、任務を怠った結果、第三者に損害を与えた場合には、取締役個人が責任を負うという規定があります(会社法429条1項)。
飲食店の調理場で勤務していた従業員の過労死(長時間勤務)について、取締役個人のこの会社法上の責任を認めた裁判例が最近出ています(京都地方裁判所平成22年5月25日判決)。この従業員は新入社員で、相当のプレッシャーを感じながら、死亡前の4ヶ月間の時間外勤務が毎月80時間を超え、会社も、1ヶ月間で100時間の時間外労働を6ヶ月に亘って認める労使間の協定(三六協定)を締結したり、基本給の中に80時間の時間外労働を組み込むなどしていました。従業員全般について長時間労働を是認する体制をとっていたもので、従業員に対する生命、健康への配慮が認められず、会社の責任と併せて、取締役の個人責任が認められました。因みに、この会社は一部上場の大企業です。
コスト管理も大切ですが、働く人の職場環境も大事です。危険管理、労務管理を含めて、管理体制に問題があった場合、取締役の個人責任が追及されることは今後とも増えてくるでしょう。要注意です。(池田伸之)