改正されれば大きく変わる/独占禁止法の新たな展開-審判制度の廃止へ
平成22年平成22年3月、公正取引委員会の審判制度が全面的に廃止される独占禁止法の改正法案が閣議決定されました。国会情勢等でストップしていますが、今年の検討課題であり、不服申立手続が大きく変わろうとしているので注目です!
公取委の排除命令は企業活動に多いに影響を与え、課徴金は最近では算定料率の上昇により制裁的な意味合いを持つ不利益な処分を伴なうようになってきました。不幸にして、公取委の摘発を受けた場合には、新たな制度としての事前手続きの特徴をよく理解したうえ、また、裁判所に対する説得的な主張立証を試みる姿勢が重要になると思われます。
改正法案では、現行52条以下の審判制度に関する条文が削除され、排除措置命令、課徴金納付命令および競争回復措置命令ほかの公正取引委員会の決定に関する不服申し立て(抗告訴訟)は、直接、裁判所にできることになり、東京地方裁判所がその専属管轄権を持つとしています。
もう少し具体的に言えば、公取委の行う事前手続きとして、手続管理官が創設され、聴聞が行われますが、当事者の主張する論点整理報告書が作成され、これは、裁判所での判断にも活かされることになる模様です。現行の手続きでは、証拠について、公取委の担当者から説明を受けるだけですが、改正点として、公取委が認定した事実を起訴づけるために必要な証拠の開示や自社関係者に限り供述調書を謄写することも検討されています。
裁判所での取消訴訟に関しては、被告となる公取委側の主張立証での質と量が議論されるところです。
気になるのは、企業や事業者が排除措置命令を争うとしても、措置命令の執行力は失効しないという現行の制度がどうなるかです。取消訴訟への移行に伴い、執行免除制度は廃止され、通常の行政処分と同様、執行停止制度(行政事件訴訟法25条)により対処することになり、損害の回復困難性を積極的に裁判所に訴えていくことなります。
弁護士の立会権などの手続保証の観点から1年かけて、今後検討されることになっていますが、実務に大きな影響を与えそうです。(池田桂子)