新型コロナウイルス感染症と雇用関係
1 はじめに
新型コロナウイルス感染症と雇用関係等について、厚生労働省が詳細なQ&Aを公開しています。
厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html)をご参照ください。
2 従業員を休業させる場合
新型コロナウイルス感染症を原因として、従業員を休業させる場合、休業手当を支払うべき義務があるかどうかは議論のあるところです。
雇用主に責任がある場合の休業の場合、雇用主は休業期間中の休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければなりません。
しかし、政府による緊急事態宣言が出ており、かつ、営業の自粛要請が出ている業種について、在宅勤務も不可能であれば、雇用主に責任がある休業とはいえず、休業手当を支払う必要が無いとも解釈できるためです。
もっとも、どの法人、個人事業主でも、雇用している従業員を無給のまま休業させ、生活ができないような状況にするのは本意ではないはずですので、可能な限りで休業手当を払うことになるのではないかと思われます。
3 従業員を解雇せざるを得ない場合
法人や個人事業主が、人件費負担をしたままでは事業を残すことができないと判断した場合、従業員を解雇せざるを得ない場合があります。
こういった場合のことを「整理解雇」と言いますが、整理解雇は裁判例において、4つの要件があって解雇が有効とされています。
具体的には、①人員整理を行う必要性、②できる限り解雇を回避するための措置を尽くしたか、③解雇労働者の選定基準が客観的・合理的であるか、④労働組合との協議や労働者への説明が行われているか、の4点です。
新型コロナウイルスの影響で、事業継続が立ちゆかなくなりつつある場合には、整理解雇の有効性は認められやすいと思いますが、従業員に対して例えば「新型コロナウイルスのために解雇します」という説明だけでは④の点が不十分と評価される可能性がありますので、できる限り詳細に説明を行い、説明した事実を書面で残しておくことが必要となります。
〈小澤(こざわ)尚記(なおき)〉