災害と建物修繕

東日本大震災から3ヶ月が経過しました。原発事故の問題も加わり、被災地の方々には、心からお見舞いとエールを送りたいと思います。

 

さて、地震で建物が壊れた時、所有している建物ならば、住宅ローンはどうなるか、が今一番の関心事です。二重ローンの負担を避けるための法的スキームが国会で議論されています。震災という予想外の出来事ととはいえ、金融機関がローン債務を免除することにするには要件の検討が重要です。金融機関の貸倒れを招かない対策も必要ですが、免除益が発生してしまうと税法上の問題をどのように解消するかも、焦点となっています。

 

なお、亡くなった方が住宅ローンの支払い途中だったという場合には、ほとんどの金融機関では、住宅ローンを組む時に、「団体信用生命保険」という保険への加入を義務付けていますので、団体信用生命保険により、住宅ローンがなくなることがあります。

 

次に、所有している建物であれば、修繕に地震保険の適用が気にかかるところです。扱いは以下の通りです。

全損・・・重要構造部の損害額が時価の50%以上、又は、焼失・流失した床面積が70%以である損害

半損・・・主要構造部の損害額が時価の20%以上50%未満、又は、焼失・流失した部分の床面積が20%以上70%未満である損害

一部損・・主要構造部の損害額が時価の3%以上20%未満の場合、又は床上浸水あるいは地面から45㎝を超える浸水の場合

また、「住家被害認定」という言葉を耳にしますが、これは被災世帯の生活再建のための支援金等の支給の前提として、地震による建物被害の程度を示すものであり、地震保険の判定とは異なるため、齟齬する場合があります。住み家が居住のための基本的な機能を喪失したり、倒壊や流失で補修しても元通りにして再利用することが困難になったりして「全壊」と判定されても、全損とならない場合は考えられます。

 

賃貸建物の場合は、残りの部分だけでは、賃貸借の目的が達せられない場合、借主は契約解除することができます。まだ使用できる場合には契約は存続しますが、滅失部分の割合に応じて賃料の減額を請求することができます。

貸主の側は、破損した建物を修繕する義務を負いますが、雨漏りや水漏れよる借主の家財道具の損害についてまで賠償責任を負うものではありません。

 

そのほか、貸主が、罹災法での適用がある場合には(適用対象地区は政令で定めます。)、貸主が新しい建物を建築した場合に、借主は優先入居することができますが、今のところ、適用するという動きはありません。罹災法は、いろいろな問題点を抱えており(日弁連は、適用に反対の意見書を提出しています。)、阪神淡路大震災の際には、すぐに適用されていますが、今回は、3か月経過しても適用されていないことから、最終的に適用されない可能性が高いのではないか、と思われます。

 

災害時に限らず、自宅も事業用建物も重要な財産です。トラブルの解決には法律の解釈や基準がものをいいます。参考にしていただければ幸いです。(池田桂子)