環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載3

~水質~

 

1 はじめに

環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載の第3回目は,水質の問題を取り上げます。

我が国では,環境基本法が人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として「環境基準」が定められています。

最近でも,令和3年(2021年)10月7日,人の健康の保護に関する環境基準のうち六価クロムについて基準値が0.05㎎/l以下から0.02㎎/l以下に見直され,生活環境の保全に関する環境基準のうち,大腸菌群数を項目から削除して大腸菌数を追加する見直しもなされており,適宜見直しがなされています。

この環境基準を達成するために,水質汚濁防止法が特定施設を有する事業場からの排水規制及び生活排水対策の推進を定めています。

そして,水質汚濁防止法は,工場や事業場から排出される水質汚濁物質について,物質の種類毎に「排出基準」を定め,排出者等は「排出基準」を遵守することが求められています。

 

2 排出水の規制

 水質汚濁防止法の排出基準では,人の健康に被害を生ずるおそれのある物質(有害物質)と,水野汚染状況を示す項目(生活環境項目)の2つの面から規制をかけています。

排出水に関する規制基準は,国が全国一律で定める一律排水基準,条例により国の基準よりも厳しくする上乗せ排水基準,東京湾・伊勢湾・瀬戸内海において化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand。COD)の総量を規制する総量規制基準があります。

CODは水中の有機物量の多さ,有機物による水質汚濁の程度の指標ですが,東京湾・伊勢湾・瀬戸内海に排水をする場合には,排水基準に加えて総量規制基準をも遵守しなければならず,それ以外の公共用水域に排水する場合では浄化設備が不足することになります。

 

3 制裁等

排出基準に適合しない排出水を排出するおそれがある場合には,都道府県知事から排水の一時停止等の改善命令等(水質汚濁防止法13条1項)を受けることがあり,それに違反した場合には罰則があります。

また,排水基準に適合しない排水を排出した場合,総量規制指定地域内の事業者が総量規制基準を遵守しない場合にも罰則があります。

事業者が廃棄物処理の許可を得ている業者の場合,廃棄物処理法上,水質汚濁防止法等の生活環境の保全を目的とする法令違反で罰金以上の刑に処せられると許可が取り消されます。

したがって,例えば,廃棄物の再生利用を図る際の副次的な発生物を公共用水面に排出する場合には,その排水が排出基準に違反していなければ,そのまま罰金となって,廃棄物処理業の許可もなくなり,廃業せざるを得なくなるリスクもあります。

 

4 最後に

水質は人間が健康に生活をしていくためには,絶対に一定の水準以上に維持されるべきものです。

これに対して,環境基本法や水質汚濁防止法が規制をかけていますが,環境法独特の厳しい側面があります。

水質汚濁をさせたことについて,従業員がやったなどということは言い訳になりません。環境法令で規制を受ける業種には弁護士のアドバイスが必要不可欠です。また,従業員研修による問題発生の予防,不正の早期発見のための外部通報窓口での問題の早期発見・是正も必要です。

池田総合法律事務所では環境法令に対するビジネスリスクに対する助言,従業員研修,外部通報窓口業務などを行っておりますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

                               〈小澤尚記〉