環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載6
~太陽光発電と規制② 山林の場合~
1 森林法について
前回の「環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載」では,太陽光発電設備に対する条例の規制,農地法の規制を取り上げましたが,太陽光発電設備を大規模に設置する場所としては「山」もあります。
山については森林法の規制があります。
森林法は,民有地の民有林行政のもととなる我が国の森林に関する基本的な法律です。
森林法は,森林計画,保安林その他の森林に関する基本的事項を定めて,森林の保続培養と森林生産力の増進とを図り,もって国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的とする法律です。
森林は例え民有林であっても,無秩序に伐採等されて荒廃すれば,土砂崩れの原因となり,保水力がなくなることで水害なども発生する原因ともなり,その影響は人の生命身体財産を損なうことにもつながります。
そこで,国(農林水産大臣)が全国森林計画を定め,都道府県知事が地域森林計画をたて,市町村長が市町村森林整備計画を定めることになっています。
そして,地域森林計画の範囲に含まれる民有林は,開発をする場合には,原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります(森林法10条の2)。
2 太陽光発電設備に対する森林法の規制
(1)原則
森林法10条の2の開発行為の許可については,「開発行為の許可制に関する事務の取扱いについて」(平成14年3月29日付け13林整治第2396号農林水産事務次官依命通知),「開発行為の許可基準の運用細則について」(平成14年5月8日付け14林整治第25号林野庁長官通知)その他の関係通知に基づき審査されてきました。
(2)太陽光発電設備の場合の運用細則
そして,令和元年12月24日付け元林整治686号「太陽光発電施設の設置を目的とした開発行為の許可基準の運用細則について」で,切土,盛土を行わなくても傾斜地に設置可能であるという太陽光発電設備の特殊性を考慮して,運用細則として異なる規制がなされています。
具体的には,①事業終了後の原状回復等を行うことを事後措置に盛り込むことを事業者に促すことができ,②自然傾斜に設置する場合には擁壁または排水設備を整備するよう求め,③周辺部に残置森林を残すとともに,開発面積を1箇所あたり概ね20ヘクタール以下とするなどとし,④住民説明会の実施や景観への配慮を求めることができるとされています。
3 森林の場合の注意点
森林を伐採して山地に太陽光発電設備を設置する場合,地域森林計画の対象地域内になるかどうかを確認する必要があります。
また,森林を伐採したことにより,土地の地盤が緩くなるなどして土砂崩れが発生して,周辺の住民等の生命身体財産が害された場合には,民法717条の土地の所有者責任を追及され,多額の賠償義務を負うおそれもあります。
特に一度伐採されてしまった森林跡に植樹をしても,樹が大きくなり,地盤を支えられるようになるには相当の期間が必要であり,樹の成長を待たずして多額の費用をかけて土留め工事などを行わなければならないリスクもあり,太陽光発電設備の売電収入には到底見合わないコストが生じる可能性もあります。
4 最後に
池田総合法律事務所では太陽光発電設備等のビジネスの構築の支援や助言なども行っておりますので,土地の所有者(地主の方)や開発を検討されている企業の方は,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。
〈小澤尚記(こざわなおき)〉