環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載8

~野焼きと廃棄物処理法~

1 「野焼き」と廃棄物処理法

屋外でゴミを燃やしている場面は,かつてはあちこちで見かけることがありました。また,現在でも田畑などで燃やしている場面を見かけることがあります。

しかし,周辺環境への影響から,現在は厳しく規制がかけられています。主に刑事事件になった事案の裁判例もあり,うっかり燃やしてしまった,昔から燃やしていたでは社会的に許されなくなってきています。

そこで,身近にある問題として,野焼きと産業廃棄物の問題を取り上げます。

まず,廃棄物,すなわちゴミ=価値が無い物,を屋外で焼却する「野焼き」は,廃棄物処理法16条の2(焼却禁止)で,原則として禁止されています。この焼却禁止の16条の2は,平成12年の廃棄物処理法改正で導入されたものです。

そして,もし廃棄物処理法16条の2の焼却禁止に違反して,野焼きをした場合,廃棄物処理法25条1項15号により,「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」と定められており,場合によっては懲役も罰金も科される(「併科」といいます)場合もあります。

さらに,会社の従業員が,会社の業務に関して野焼きをした場合には,廃棄物処理法32条1項1号により,会社についても「3億円以下の罰金刑」が科される場合があります。

「野焼き」の罰則は,皆さまが重っているよりも重いものですし,会社の従業員が「野焼き」に業務上関わった場合には,会社も罰金を科されるリスクも負うことになります。

 

2 「野焼き」の廃棄物処理法上の例外

(1)廃棄物処理法上の例外

 廃棄物処理法上では,廃棄物焼却の例外として,

①一般廃棄物処理基準,産業廃棄物処理基準等に従って行う廃棄物の焼却(16条の2第1項1号)

②他の法令またはこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却(16条の2第1項2号)

③公益上もしくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却または周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令に定めるもの(16条の2第1項3号)

が定められています。

例えば,②の他の法令等に基づく廃棄物の焼却には,家畜伝染病予防法に基づく家畜の死体の焼却があります。具体的には,鳥インフルエンザに罹患したニワトリの死体の焼却などがあたります。

(2)3号の例外の具体的内容

 廃棄物処理法16条の2第1項3号の政令は廃棄物処理法施行令14条が該当します。施行令14条では,

①国または地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却(1号)

②震災,風水害,火災,凍霜害その他の災害の予防,応急対策または復旧のために必要な廃棄物の焼却(2号)

③風俗習慣上または宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却(3号)

④農業,林業または漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却(4号)

⑤たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なもの(5号)

が定められています。

②の震災等に伴う廃棄物の焼却としては,例えば,災害時の木くず等の焼却などがありえます。

③の宗教上の行事のための廃棄物焼却としては,たとえば「どんと焼き」「左義長」なども不要となったしめ縄やお札を燃やす点では廃棄物の焼却にあたりますが,3号で例外として認められています。

④の農業等のための廃棄物焼却は,例えば農業従事者が行う稲わら等の焼却,林業従事者が行う伐採した枝葉等の焼却,漁業従事者が行う漁網に付着した海産物の焼却などがあたりえます。

⑤の日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却には,例えばキャンプファイヤーで木くずを燃やす場合などがあたります。

以上については,平成12年9月8日衛環78号各都道府県・各政令市廃棄物行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知をご参照ください。

(3)裁判例

 廃棄物処理法16条の2(焼却禁止)に関する裁判例は次のようなものがあります。

 ①仙台高裁平成22年6月1日判決

 廃棄物処理法16条の2の「焼却」の意義について,「廃棄物の物理的損壊,滅失に着目して論ずべきではなく,生活環境に与える影響に着目して論ずべきであるということになる。(中略)そうすると,生活環境に有害な影響を与えるがい然性,すなわち,煙,有毒ガスの発生,あるいは周辺に火災が発生する可能性が生ずれば,同条により禁止すべき焼却に該当するといえる。そして,廃棄物がどの程度の燃焼状態に至った段階で生活環境に与える影響があるかといわば,廃棄物が独立して燃焼を継続する状態に至れば,煙などが廃棄物から持続的に発生するなどして,生活環境に有害な影響を与えるがい然性が高いということができるから,この段階で廃棄物を焼却したものということができる。」としています。

②東京高裁令和2年9月20日判決

 自宅敷地内の畑などで梨を主体に梅,柿,ミカンなどを生産し,タケノコを採取していた農家が,自宅敷地内において廃棄物である竹約20.5キロと柿の木の枝等4.25キロを焼却した事案において,『「農業者が行う稲わら等の焼却,林業者が行う伐採した枝条等の焼却,漁業者が行う漁網に付着した海産物の焼却」などと(上記の)課長通知が例示するような焼却は,それぞれの事業に伴って生じる廃棄物を,農地,山林,海岸等その発生場所で焼却する場合には,周辺環境への支障が生じるおそれが少なく,これらの発生場所が一般民家等の人の居住地と離れた場所であれば,市町村の収集などによる通常の処理にもなじまないと考えられることから,従前農業等を営むために行われていたこれらの焼却が,周辺環境への支障を生じるおそれがあるにもかかわらず,社会慣習上やむを得ないものとして受容されてきたことを踏まえ,除外事由と定められたものと解される。したがって,本件竹及び本件柿の木の枝等の焼却が施行令14条4号に該当するか否かの判断に当たっては,それが社会慣習上やむを得ないものとして許容される域にあるかどうかの判断が重要であるものと解される。』として,農家が周辺に一般民家,畑,資材置き場等が混在する旧来の住宅街にあり,重機を使って穴を掘り,その穴の中で焼却したことなどから,焼却の態様及び規模等を考えると,周辺環境への支障が生じるおそれが少ないともいえない,燃やすゴミの収集対象や大型ゴミの収集対象ともなっており,近隣業者に高額ではない金額で受け入れてもらう手段等もあることから,社会慣習上やむを得ない場合にあたらない,としています。

 

3 最後に

廃棄物の焼却にも刑事罰という厳しい処罰が容易されていますし,事業者が許認可を得ている業種の場合には,刑罰により許認可が取り消されるなどするリスクもあります。

木くず等であっても,法令遵守を意識して,適切に処理をしなければ,事業継続ができなくなる可能性も否定できません。

そして,どのような業種でもまったく廃棄物を出さずに事業をしていくことはおよそ不可能ですので,廃棄物処理法を意識する必要があります。

池田総合法律事務所では廃棄物処理関係の支援や助言なども行っておりますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉