知財侵害物品の水際での取り締まりについて

模倣物品の輸入は、年を追うごとに急増しており(その90%以上は中国からのものです)、各メーカー、輸入業者の方々もその対策に頭を悩まされていることと思います。

 

模倣品対策としては、後に述べるような裁判手続を利用する方法もありますが、より簡易かつ強力な対策として、関税法に基づく税関当局による輸入差止めという方法があります。
これは、特許権、意匠権、商標権、著作権等の知的財産権の権利者や、不正競争防止法上の違法行為の被害者等が、税関に対し、通関手続中の模倣品について権利侵害認定の手続をとるよう申立て、税関が侵害ありと認定して物品を没収、廃棄するための一連の水際取締のための制度です。
申立は、用意された書式に順次記載していけば足り、比較的簡便に申立が出来、申立が受け付けされれば、全国の税関で迅速に対応してもらえ、国内での流通の水際で阻止することができます。また、申立の手数料も不要で、権利侵害についての立証も疎明で足りる等、メリットが大きいものです。

但し、侵害品かどうか税関で識別するための「識別ポイント」を明確に示す必要があります(たとえば、真正品と侵害品では、洋服のワッペンの位置が違うとか、侵害品の洗濯タグには、誤植がある等)。輸入差止実績をみると、件数ベースでは、バッグ類、衣類、靴類の順で多く、これらだけで6割を超えています(平成27年)。
また、デッドコピーのように明らかな模倣品には有効ですが、権利侵害に争いがある場合には、不受理や保留とされ、裁判手続を執らざるをえないことになります。
さらに、水際で阻止するためのものですので、輸入許可が下りてしまった場合には、この手続を利用することはできません(但し、保税地域に搬入されて輸入許可申告中の場合は、可能です。)。

 

輸入許可が下りてしまった場合には、国内での流通を阻止するためには、裁判所に、処分禁止の仮処分を申請して、決定を得て、執行官による侵害品の保管の執行をしてもらう必要があります。

 

模倣品の輸入が発覚した場合には、迅速な対応が必要であり、対応が遅れると、有効な対応がとれず、多大な損害が発生することにもなります。こうした場合には、是非、弁護士に相談のうえ、輸入差止、処分禁止の仮処分申請、相手方への警告書の発送等、各段階に応じた有効かつ的確な対抗手続をとって下さい。(池田伸之)