知財調停始まるー知的財産権に関する紛争解決の場としてご利用を
今年秋(令和元年10月1日)から知的財産権に関する調停手続きが始まります。特許、商標、著作権などの知的財産権をめぐる紛争の解決手続きは、訴訟及び仮処分の手続きが中心ですが、裁判所関与のもと、その手続きの中で、和解で終了することも多いものです。紛争当事者の間では、訴訟が裁判所に提起される前に、交渉が行われていることも少なくありません。そうした実情をみますと、知財に関する調停手続きという、話合いにより解決策を見出していく手続きの効用も多いに期待できるところです。
新たな運用は、東京地方裁判所と大阪地方裁判所です。原則として3回の調停期日のうちに、争点や証拠の評価などについて、専門的な知見を持った調停委員会が一定の見解を示すことで、解決策を探ります。
手続きは、調停申立を受けて、相手方が第一回期日までに争点についての実質的な反論を行い、裏付ける証拠を提出します。申立から6週間程度で第一回期日を予定しているようですから、かなり迅速な手続きを想定していると言えます。第三回期日までに調停委員会は当事者に対して争点についての心証や調停による解決可能性について口頭で提示するという手続きの流れです。TV会議の利用ももちろんあります。
調停委員会は、知財部の裁判官と弁護士・弁理士などの調停委員により構成されます。場合によっては、裁判所調査官が関与することもあります。
知財調停のメリットとして、専門性や迅速性のほかにあげられるのは、柔軟な解決策が期待されること、当事者以外の者に公開されないことなどがあげられます。
もっとも、管轄の合意に基づき、利用することになります。
さて、同様な紛争解決機関として、既に、東京、大阪以外にも裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種として、日本知的財産仲裁センターがあります。愛知県弁護士会も日本弁理士東海支部と協力して、開設しています。多いに利用価値があり、大阪、東京に出向かなくともよいという意味で、便利です。申立に関する費用も低額、定額です。こちらは、管轄合意がなくとも、申立は可能であるという点でも、申立のハードルが低いという印象があります。
知的財産に関する紛争は多岐にわたります。商標類似や先使用の問題、著作権侵害の問題、営業秘密の不正取得、特許権侵害や特許権の帰属に関する問題、ライセンス料に関する争いなど、これらに限定されない幅広い紛争解決にご利用ください。<池田桂子>