社外取締役を置くことの義務付けについて

令和元年の会社法改正により、監査役会設置会社のうち、公開会社であり、かつ大会社で、金融商品取引法上、発行株式につき、有価証券報告書の提出義務を負う会社については、社外取締役を置かなければならないとされ(改正会社法第327条の2)、既に改正会社法は施行されております。但し、改正法の施行当時(2021年3月1日)、上場会社等であって社外取締役を置いていないものについては、選任のために臨時株主総会を開催することは要せず、改正法の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までに、社外取締役を選任すればいいことになっています。したがって、3月末日を決算日とする会社については、来年の定時株主総会までに対応すればいいことになります。

 

これまでは、上記の対象会社が社外取締役を置いていない場合には、取締役は定期株主総会で、社外取締役を置くことが相当でない事由を説明しなければならないとされていたものを一歩進めて、義務化したものです。少数株主を含む全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する立場として、業務執行者から独立して経営を監督し、コーポレートガバナンスを実効的に機能させていくという社外取締役の役割、有用性が広く認知されていることもあり(令和2年7月現在で上場会社の98.4%において社外取締役が選任)、義務化されたものです。

 

対象会社は、以下の要件を全て満たす株式会社です。

①監査役会設置会社であること

なお、監査等委員会設置会社や指名委員会設置会社については、2人以上の社外取締役を必ず置くこととされており、今回の改正は監査役会設置会社のみを対象としたものです。

②公開会社であること

全株式を自由に譲渡できる株式会社であること(株式の譲渡制限のない会社)

③大会社であること

貸借対照表上の資本金が5億円以上であるか、又は、負債の合計額が200億円以上で計上されている株式会社

④金融商品取引法24条第1項により、株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社

金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社、すなわち、上場会社がその対象となります(同項1号)。また、上場していなくても、株主が1000人以上である株式会社等は対象会社となります(同項2号)。

 

施行後遅滞なく社外取締役の選任をしなかった場合には、取締役としての善管注意義務違反が問われ、また、100万円以下の過料に処せられます。

また、事故等により、社外取締役が欠けるに至った場合も、社外取締役を選任するための手続きを遅滞なく進めて、合理的な期間内に社外取締役が選任されたときは、それまでの間になされ取締役会の決議は無効とならないとされています。但し、長期間欠員のまま放置され、社外取締役による監督がなされていない状況の取締役会の決議は無効となる場合もあります。

 

社外取締役が1名の場合は、不慮の事態に備えて補欠取締役の選任(会社法329条3項)をするといった対応も必要であると考えられます。

また、東京証券取引所が上場会社に求める主要な原則をまとめた改訂コーポレートガバナンスコード(令和3年6月11日施行)では、市場再編後のプライム市場上場会社においては、独立社外取締役を3分の1以上、それ以外の市場上場会社は、2名以上選任すべきとされています。

 

池田総合法律事務所は、会社の組織運営・株主総会運営等を含め会社法務全般について業務を取扱っており、社外取締役、監査役として稼働している弁護士も在籍しております。お気軽にご相談ください。

(池田伸之)