自転車に関する昨今の道路交通法改正 ~自転車事故を起こさない・逢わないために~

交通事故において、自転車は加害者にもなれば被害者にもなりえます。

高校生の運転する自転車と高齢者が接触し、高齢者が死亡して多額の損害賠償をされた報道を目にした方もおられるかも知れません。スピードが出た状態で自転車が歩行者に衝突すれば、死亡事故にもつながりかねず、その場合損害賠償の金額は極めて多額になることもあります。

加害者にならないよう、安全運転のための交通ルールを改めて確認しておくことが重要です。自転車は道路交通法「軽車両」に分類されるため、原則として車道を走行しなければならないですし、道路の左側を走行しなければならないとされています。そのため、自転車が関係する事故では、自転車が右側通行をしている事実は、自転車側の過失を増やす方向に働きます。

無論、飲酒しての運転は厳禁ですし、いわゆる、ながらスマホの自転車も罰則が強化されました(令和6年11月)。自転車運転中に「ながらスマホ」をした場合には、6か月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金が、自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合には、1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が科されることがあります

当然ながらスマホなどの法令違反も右側通行と同様、自転車側の過失を増やす方向に働く事情になりえます。警察庁「令和7年上半期における交通死亡事故の発生状況」によると、事故に遭った自転車運転者の法令違反ありの割合は約7割から8割で高止まり、とされています。令和8年4月1日には自転車の運転にも青切符も導入されますので、改めて、安全確保のための交通ルールの確認が重要です。

加害者にならないのがなによりですが、万が一、加害者になってしまったときのために、損害保険などへの加入が推奨されます。

 

自転車は被害者にもなり得ます。自転車運転者を守る法改正もあります。

歩行者の安全のため、自転車は軽車両なので車道を走らなければならない、頭では分かっても、猛スピードで車が追い越していく車道のすみっこを自転車で走行するのはおそろしい体験です。自転車の右側面が接触する事故防止のため、自転車を自動車が追い越す場合のルールも新設されました。

自動車が自転車を追い越す場合、自転車との間に十分な間隔を空けて追い越す必要があり、具体的には1.5m以上が十分な間隔の目安とされています。狭い道などで、自転車との間隔が十分にとれない場合は、安全な速度で走行する義務が生じます。これらに違反した場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されることがあります。自転車の脇を自動車が追い越していくというのは日常的によく目にする光景でしたが、遅くとも令和8年5月23日には罰則の対象になり得るので、自動車を運転する方も要注意です。

(山下陽平)