財産開示期日の後について
2023年3月,4月のブログにて,「財産開示手続」と「財産開示期日」の記事を載せました。
今回は,財産開示期日の後をご説明させていただきます。
1 財産開示期日後の理想的な展開
財産開示期日のその後として,もっとも目的を達成することができるのは,強制執行できる財産が期日で明らかになり,強制執行をして回収を果たすことです。
また,債務者(金銭を支払う義務がある者)から申出があって,一定額を回収する和解が成立することも,目的を達成することができます。
2 財産開示期日を経ても回収できない場合には
債務者が,正当な理由もなく,財産開示期日へ出頭せず(不出頭),宣誓拒否,陳述拒否,虚偽の陳述を行った場合には,6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰が科されます(民事執行法213条1項5号,同6号)。
そして,この刑事罰にしたいと債権者として考えた場合,警察に民事執行法違反を理由として告発することになります。
しかし,告発状に記載するうえでは,不出頭・宣誓拒否・陳述拒否と,虚偽陳述では難易度が変わります。
(1)不出頭・宣誓拒否・陳述拒否
債務者が財産開示期日に出頭しない場合は,その不出頭は誰の目から見ても明らかです。
また,宣誓拒否・陳述拒否も,裁判所の作成する財産開示期日調書に宣誓拒否や陳述拒否が記載されることになりますので,裁判所という公的機関の書類上明らかになります。
したがって,財産開示期日調書などの裁判所の書類を証拠として告発状を警察に提出すれば良いことになります。
(2)虚偽の陳述
しかし,財産開示手続で虚偽の陳述を述べたとして民事執行法違反で告発する場合,虚偽の内容を具体的に説明できなければ告発が難しいことになります。
例えば,預金は無いと言っていたのに,本当は預金があったから,財産開示期日では虚偽の陳述をしたと告発する場合には,財産開示期日時点で預金が存在したことを裏付ける資料を告発状に付ける必要がでてきます。
そのためには,預金を探索して更に強制執行(預金の差し押さえ)をして,情報を収集し,告発のための資料を少しずつ揃えていく必要があります。
3 財産開示期日の後への弁護士の関与
民事執行法違反で告発を検討する場合には,どのような資料を揃え,どのような内容の告発状を作成して,警察に提出するかを十分に検討する必要があります。
そのためには,弁護士に依頼した方が手続の進行もスムーズですし,刑事告発に際して弁護士が担当する警察官に直接十分な説明をして刑事手続を進めるように求めることもできます。
当事務所でも,虚偽陳述を理由として民事執行法違反での告発の依頼を受け,刑事罰まで手続を進めた経験もあります。
なお,ご注意いただきたいのは,告発して刑事罰に至ったとしても,罰金を納付する先は国であって,債務者が債権者に金銭を支払うとは限らないという点には注意していただく必要があります。
債務名義はあるけれど,債務者が支払わず困っている方は,あきらめずに池田総合法律事務所にご相談ください。
(小澤尚記(こざわなおき))