贈与と税金のはなし―会社への贈与は要注意
「贈与と税金との関係」というと「贈与税」が頭に浮かんでくると思いますが、贈与は、会社をはじめとする法人も、贈与をしたり、贈与を受けたり(受贈)することは可能であり、個人、法人、贈与、受贈の組み合わせで問題となる税が異なってきます。
(1)個人から個人への贈与
受贈者に贈与税がかかり、贈与者には、税金はかかりません。
(2)個人から法人への贈与
受贈者である法人は、時価相当の財産を無償でもらえたことにより、利益(受贈益)が生じ、法人税がかかります。
問題は、贈与者の側です。上記の通り、受贈者が個人の場合は、贈与税、その他の税金はかかりませんが、受贈者が法人の場合は、贈与者である個人にも財産を時価で譲渡したとみなされて「みなし譲渡所得税」がかかります。
この場合の時価は、路線価ではなく、「時価」であり不動産の譲渡などの「含み益」に課税されます。したがって、含みのない現金の場合は、税金はかかりません。
但し、公益法人などへの寄付の場合は、税金はかかりません。
また、受贈者が同族会社の場合には、株式等の価額が贈与によって、増加をした場合には、その増加分については、会社ではなく、株主に贈与されたものとされ、同族会社の株主にも贈与税が課税されます。
(3)法人から個人への贈与
贈与者の法人は、財産を時価譲渡したものとして取得価格との差額が売却益として法人税が課税されます。受贈者である個人が、従業員や役員の場合であれば、賞与、役員賞与になり、そうでなければ寄付金として仕訳され、経費として控除できるかどうかが、次の問題となります。
受贈者である個人には、贈与税ではなく、所得税がかかります。従業員や役員の場合は、給与所得であり、そうでなければ、一時所得となります。
(4)法人から法人への贈与
贈与者の法人には、財産の時価譲渡としての売却益に対し、受贈者の法人には、受贈益に対し、それぞれ法人税がかかります。
節税の対策として同族会社を作って、そこに個人資産を移転するといったことがありますが、その際、贈与の手法をとった場合、上記の通り、思いもかけずに、贈与者である個人や法人の株主に税金がかかることがありますので、要注意です。どうやって資産を受け継いでもらうのか、慎重に、かつその時期も、また、目的も、考えながら進める事が必要です。(池田伸之)