遺言のすすめ~遺言の有難味

遺言を書くことは、自分の死に向き合うことなので、出来れば考えたくないし、ましてや、親にそんなことはすすめられない、また、遺言を残しておくほどの財産もないし、兄弟仲良くやってくれると思うので、必要もない、というように考えている人が多く、遺言がそれほど普及していないのが実情です。

 

しかし、子ども達も結婚し、それぞれの家族を持ち、生活、財産状況も異なってくると、仲良く遺産分けが進むとも限りませんし、自宅以外にたいして分ける財産がないところで、相続分を主張されたりすると、自分の生活の根拠となるような自宅を処分しなくてはいけなくなったりして〈争族〉関係になりかねません。

遺言を書いておいた方がいいと、皆様も一度は耳にしていると思いますが、どうして、いいのでしょうか。

 

遺言には、以下のような効用があります。

 

1.遺言は、自分の財産の最後の処分行為(自分の財産は、自分で処分する)

遺言は、自分の財産であり、本来、どのように処分をしようが自由ですし、要件をみたしておれば、どのような処分を遺言で定めようが有効です。一定範囲の相続人については遺留分という、家族としての最低保障分の権利はありますが、これも遺言内容がわかり、自分の遺留分が侵害されていることがわかってから1年以内に権利行使しなければ、遺言通りということになります。

また、親や子どもがいない夫婦の場合、配偶者の兄弟姉妹が相続人となりますが、兄弟姉妹には遺留分がないので、配偶者に全て相続をさせるという遺言をしておくことが可能ですし、とかく、義兄弟との間では争いが起きがちですので、このような場合は、残された配偶者のために遺言を残して置くべきでしょう。

 

2.遺言によって名義書換がすんなりといく

不動産等について、相続開始後、名義を書き換えるためには、他の相続人の印鑑証明書添付の実印による遺産分割協議書が必要となってきますので、遺産分割の話が出来なければいつまでも名義書換ができません。

葬儀費用や税金などの支払いをしようとしても、同様に他の人の印鑑等がないと名義書換ができません(最高裁の判決で銀行預金については法定相続分によって当然に分割され、各相続人がその分については請求できるということになりましたが、今でも、銀行実務としては、他の相続人の印鑑などの要求をしてくる金融機関が多いのが実情です。)。

こうした場合、遺言により、取得分が明らかになっておれば、他の人の印鑑がなくても、不動産の名義書換や銀行預金の解約が出来ます。

 

3.死亡後は、財産の処分をしてもらいたい場合は、遺言執行者の選任が有効です。自分の死後、財産を売却して分けてもらいたい場合、売却にあたっては相続人全員の同意(実印、印鑑証明書)が必要ですので、売却代金額等でもめたりして一人でも反対があれば、売却出来なくなりますし、行方不明の人でもいると、売却は事実上困難となります。こうした場合には、遺言執行者を選任して、売却による配分の方法などを定め、売却の権限を遺言執行者に付与しておけば、遺言執行者の実印、印鑑証明書だけで売却することができ、相続人の実印、印鑑証明書は不要となります。

 

遺言については、無料相談会を実施しておりますので、そちらもご利用下さい。(池田伸之)