都市伝説-3年別居離婚説?

離婚は、相手方が了解しない場合には、法律の定める理由が必要で、理由がない時には、離婚の請求が出来ません。ただ「性格の不一致」だけでは、離婚は出来ません。民法が掲げる理由には、「離婚を継続し難い重大な事由があるとき。」というものがあり、婚姻関係が破綻をしていることが、その一つの内容となります。

破綻しているかどうかは、夫婦関係という当事者間の微妙な問題で、外からみてもよくわかりません。そのため、別居という夫婦関係の断絶という外形を基準にして考えてみては、ということになり、別居が3年もすれば、夫婦関係の破綻による離婚は認められるでしょう、というのが別居3年離婚説です。

確かに、外国の例では、2~3年の別居で離婚を認めている国もあり、3年程度の別居で離婚を認めている裁判例もあります。しかし、それは少数で、別居に至る経緯に有責性があったり、そもそも同居期間が短かったり、といった他の事情が加味されているものが多いようです。やはり、最低でも6~8年程度の別居を必要とする裁判例の方が多いのではないか、と思います。確かに、安全圏として少し余裕をみたうえで、法的な手続きに入っているので、上記のような結果となっているのかもしれませんが、やはり特殊な事情がなければ、少なくとも、5年以上は必要でしょう(民法の改正が議論される際、5年別居で、離婚を認めてはどうか、という議論もあります。)。

不貞などの有責配偶者からの離婚請求で15年経過しても認めないという裁判例、障がい者(子)を抱えて、介護や経済的困窮を理由に9年の別居でも離婚を認めなかった裁判例もあります。

江戸時代には、夫側からの離婚しか認められず、妻の方から離婚を求めようとする場合、その最終手段として、縁切寺(鎌倉の東慶寺ほか)への駆け込み制度がありました。寺が調停を進めて、うまくいかない時は、寺入りとなり足かけ3年(実質満2年)経つと離婚が成立するということで、このあたりにも、3年別居離婚と同じ発想があるのかもしれません。

夫による連れ戻しは禁止され、寺入りといっても、実際は、寺が積極的に離婚に向けた調停活動を行い、寺に入ることなく、妻が実家に戻るケースが大半だったということです。寺の調停権限は、全国に及び、妻側にとっては、強力なシェルターだったようです。

閑話休題。別居は外形的事実として重要なポイントの1つではありますが、一方的な別居が開始されることもあるのですから、かなりの期間が経っても、その間に他方からやり直そうという働きかけや気持ちも無いことが確認されることが、もう1つのポイントです。             (池田伸之)