面会交流に関する改正
親子関係の改正民法は、令和8年5月24日までに施行されます。今回は、親子の面会交流について、どのような改正がなされたのかを解説します。
離婚協議の過程で、夫婦が別居をすることは珍しくありません。夫婦仲が悪くなりトラブルになる、一緒に暮らす意欲が乏しくなる(別の人と暮らす意欲が増す)などという個別の事情もあるでしょうし、一定期間以上の別居期間を経れば一方当事者の意思のみで裁判手続での離婚が可能となるという法的な効果を狙ってのこともあるでしょう。
ただ、別居は当事者たる夫婦関係の問題であるのみならず、父母と子どもの親子関係の問題でもあります。夫婦の別居により子どもを監護していない親(非監護親)が子どもと定期的かつ継続的に面会することを、「面会交流」といいます。
この面会交流は、離婚の前後にかかわらず重要なはずですが、現行の民法では婚姻中の夫婦・父母が別居している場合の面会交流については、これまでも調停手続の中で話し合われてはきましたが、明文の規定がありませんでした。そこで、改正民法では第817条の13は、婚姻中の別居の場合の親子の面会交流の規定を新設しました。父母の協議によってさだめること、子の利益を最も優先して考慮しなければならないこと、父母での協議が調わずまた協議できないときは、家庭裁判所がこれを定めるという内容が明記されました。
その他、改正民法では、父母以外の親族と子(例えば、祖父母と孫)の交流についての規定が新設されました。従前の判例では、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に面会交流についての審判申立が出来ないとされていました。しかし、子にとって、長年一緒に暮らしていた祖父母と交流を絶たれてしまうのが望ましいとは思えません。そこで、改正法の第766条の2第1項は、親子関係と同じような親密な関係が形成されているような、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」は、家裁は祖父母等との交流を実施する旨を定めることができるとしました。なお、祖父母や兄弟姉妹以外の親族でも、過去にその子を監護していた場合には、子との面会が認められる余地があります(同2項)
以上は、民法の改正点についての説明ですが、家庭裁判所での家事審判の進め方に関する家事事件手続法についても、関係する改正がありました。家事審判で面会交流をどのように定めるか検討する際に、よりよい面会交流のあり方を決めるため、結論を出す前の段階で、試行的に面会交流を実施出来るとしたのです(改正家事事件手続法第153条の3)
以上のような法律の改正がありましたが、子の利益を第一にするという基本方針には変わりはありません。子の利益を、よりきめ細やかに掬い上げるために改正が行われました。円満・円滑な面会交流が期待されます。
(山下陽平)