AIと広告

AIが発達するにつれて,AIが活用できる分野は飛躍的に大きくなってきています。

池田総合法律事務所でもAIが生成した契約書のチェック(ご相談者の取引先が作成した契約書であることも,ご相談者が生成した契約書であることもあります)を依頼されることも徐々に増えてきました。ただ,AIが生成した契約書には,法律上も学問上も存在しない,AIが産み出したまるで法律用語のような言葉が使われているなど,現時点では一見もっともらしく見えても,弁護士から見ると独特の「AI臭さ」「AIっぽさ」を感じます。

さて,今回は,いままで人間では考えつかなかったようなことも生成してしまうAIを広告に活かす際の注意点を検討してみます。

 

1 著作権,商標権の関係

AIは機械学習の際に色々なデータを取り込んで,様々なことができるようになります。

その学習データの中には,著作権で守られている著作物や商標権で守られている商標(トレードマーク)が取り込まれている可能性があります。

AIに広告の生成を指示した場合,その生成結果としての広告が,著作者の諸作物に類似しているか,商標に類似しているか,権利を侵害していないかのチェックを現状AIに任せることはリスクが大きいと考えられます。

他者の作成した著作物をAIに学習される段階では著作権の侵害とはならないのですが,学習させたAIが他者の著作物に似た広告(著作物)を生成する場合には,著作権侵害となり得ます。依拠性と類似性が判断の鍵になってきますが,この点の判断もAIに任せることはできません。

したがって,AIが広告を生成できたとしても,最終的には著作権や商標権の知識のある人間がチェックをし,権利侵害の有無を判断する必要があります。最後に責任の負うのは,個人であったり会社であったりしますので,AIにすべてを任せることはできません。

 

2 コンプライアンスとの関係

著作権や商標権を侵害しないようにすることもコンプライアンス≒法令遵守に含まれますが,現在ではコンプライアンス=法令遵守とは限らないことは,会社の経営者であれば共通して持っている感覚だろうと思います。

そして,法令遵守以外のコンプライアンスには,たとえば社会に期待されている役割を果たすこと,人権を尊重することも当然に含まれているというのが共通認識となっていると思います。

AIが生成するものの問題は,一見もっともらしい,一見しっかりとできていることから,人間が思考停止してしまいがち(AIがしっかり作ってくれたし,見た目も良いので問題無いだろう)なことです。

しかし,広告に例えば差別的な表現が含まれていた場合には,その広告を掲載した会社の評判は大きく下がります。

また,AIは人間が思いつきもしない未知の概念を生成してくれます。これは革新を生み出すものであるかもしれませんが,人間として受け入れられない間違ったものである可能性もあります。

さらに,AIが既知の情報同士を組み合わせて,誤った情報や非科学的な情報が生み出され,それを前提とした広告が生成されている可能性もあります。

そこで,必ず人間が,AIが生成した広告が,現代社会において許されない表現をしていないか,現代の倫理観からはずれる内容となっていないかをチェックする必要があります。

 

3 まとめ

著作権,商標権については侵害するかもしれない懸念を念頭において対応することができると思います。

しかし,コンプライアンスについては,できるだけ多角的な視点でチェックをする必要があります。最近は人権デューデリジェンスという言葉が生まれてきたように,企業には人権感覚も求められています。そして,基本的人権を擁護することを求められている弁護士の視点を入れることも有益です。

また,AIを活用する場合でも,AIが生成した広告(コンテンツ)を審査するプロセスやガイドラインを構築しておき,必ず人間の審査が入るように企業内での仕組を作っておく必要があります。

池田総合法律事務所では,企業におけるコンプライアンスを推進・向上し,プロセスを構築するに際しての助言等の業務も取り扱っていますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉