AI(人工知能)と弁護士業務

AI(人工知能)に契約書の文言を学習させ,契約書のチェックや定型的な契約書の作成をAIに担わせるということが世の中に徐々に広がりつつあります。

そして,現在,アメリカ合衆国のOpenAIが開発したChatGPTが話題になっています。

ChatGPTは,対話型AIですが,短文に対して応答できないSiriやAmazonエコーなどのAIとは異なり,まとまった文章(質問)に対して,まとまった文章で回答ができるというAIです。

ChatGPTの核心的な部分は,会話を成立させるための強化学習をし,文章での質問を,AIが検討し,質問に対してまとまった回答を文章として提示できるというところにあります。そのうえで,回答の内容も一見して人間があたかも回答したような水準に到達しています(内容として正しいか,間違っているかは別の問題です。また,AIに故意に偽の情報を大量に作成させ,インターネットに拡散させることも技術的に不可能ではないでしょう)。

このように言語を処理して,言葉を読み解き,言葉で返答,文章で回答できるようになれば,例えば,あるワードを提示すれば,一定の回答のようなものがAIにより提示される将来が来るかも知れません。スマートフォンに疑問に思っていることを言葉で入力すると,スマートフォンからまとまった回答が数秒後に言葉で返ってくるという世界です。

法律分野であれば,例えば,まずAIに我が国の法令をすべて機械学習させます。そのうえで,大量の判例を読み込ませ,どのような事案で,どのような法律が適用され,その結果として判決がどのような結論になったかを機械学習させます。更に,法曹が学習する法学や要件事実をも機械学習させるとします。

そうすると,法律的な問題を抱えた相談者は,その法律分野に特化したAIに,言葉や文章で事実関係を入力できれば,AIは事実関係を言語処理して読み解き,一定の文章等で回答できる未来が来るかもしれません。

そのような将来で,弁護士が果たす役割は,相談者から事実関係を聴き取ることになるかもしれません。人間の記憶は曖昧なものですし,必要な事実関係を相談者自身が適切に整理して,言語化するのは相当に困難であろうと思いますので,その事実の抽出が必要になるためです。もっとも,このような仕事は現在も弁護士として必要なスキルですので,弁護士の仕事はあまり変わらないのかもしれません。

また,AIが法律業務を担う場合には,弁護士法72条の問題は必ず生じてくるものと思われます。

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                         〈小澤尚記(こざわなおき)〉