相続税計算のおおまかな流れについて
平成27年から相続税の税制が改正されて、相続税の支払いをしなくてはいけない人が増える、税率も上がったということは、重ねてマスコミ報道がなされて皆様もご存知のことと思います。
そこで、以下には、相続税が掛かるかどうか、掛かるとして、どの程度のものが掛かるか、計算上の重要なポイントを具体的な例に即して、ご説明します。
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まず、プラスの相続財産を計算します。
不動産、預貯金、株式等を合計します。(不動産の評価の仕方は、後に述べます。) -
マイナスの相続財産を計算します。
被相続人の借金(住宅ローン等)や未払いの税金、入院費を合計します。 -
死亡退職金、生命保険金について、前に述べたように、相続の対象ではありませんが、相続税の計算上は、相続財産とみなされて計算に入れられます。
ただし、法定相続人が取得する死亡退職金や生命保険金については、それぞれ法定相続人の数×500万円までは非課税とされ、これを超える部分が課税の対象となります。 - 死亡する前3年以内に贈与された財産についても、相続税の計算上は、相続財産として持ち戻して計算します。
- 葬儀費用も控除出来ます。
具体例でお話します。
相続人は、妻と子ども2人です。
財産は 不動産(自宅) 3000万円-①
預貯金 1000万円-②
生命保険 2000万円-③
(但し、500万円×3=1500万円は非課税)
葬儀費用 200万円
債務(住宅ローン)2000万円
としましょう。
財産は、3000万+1000万+500万(2000万-1500万円分の控除後)
=4500万円
控除するものは、200万+2000万=2200万円
で、控除後の合計は、4500万-2200万円=2300万円となります。
一方、基礎控除は、3000万円+(600万×法定相続人の数)ですので、3000万+600万×3人=4800万円となります。
債務等控除後の相続財産の総額は2300万円で、基礎控除の合計を下回りますので、この場合は、相続税の心配はない、ということになります。
このように、まず、ご自身のケースの基礎控除金額と相続財産を比較して、それを上回るかどうかで、大まかな見当をつけることが出来ます。
ただし、微妙な場合は、必ず、弁護士、税理士等の専門家にご相談下さい。
上のケースで、相続債務等の控除後の遺産総額が、仮に1億円だったとします。そうすると、基礎控除後の課税遺産総額は、1億円-4800万円=5200万円となります。
法定相続分は、妻1/2、子ども1人ずつ1/2×1/2=1/4ですので、各人の相続分相当額は、
妻5200万円×1/2=2600万円
子ども1人当たり5200万円×1/4=1300万円となり、
各人ごとに、相続税額を算出します。1000万円を超え、3000万円以下については、税率15%で、50万円の控除なので、
妻 2600万円×15%-50万円=340万円
子ども1人当たり 1300万円×15%-50万円=145万円
よって、総額は、340万円+145万円×2人=630万円になります。
遺産分割は、法定相続分通りに分ける必要はなく、全員の同意があれば、どのようにでも分けることが出来ます。
例えば、この場合、子ども2人に差をつけて、
1人の子どもは、他方の子どもの2倍の相続財産を取得する、すなわち、
妻1/2:子A1/3:子B1/6で遺産分割をすると、その取得の割合に応じて、相続税も分配することになります(多く取得した人は、多く相続税を負担するということで、公平で利にかなっています。)。
そうなると、相続税の負担は、
妻 630万円×1/2=315万円
子A 630万円×1/3=210万円
子B 630万円×1/6=105万円となります。
まず、配偶者には、配偶者控除といって、遺産総額の1/2又は、1億6000万円までの財産のいずれか大きい方を取得した場合は、その金額を控除することが出来ます。
このケースで、妻は、2600万円しか取得していませんので、相続税の心配はありません(但し、適用を受けるためには、申告の必要はあります。)。
このほか、前述した3年以内の贈与財産は、相続税の計算上、相続財産に算入されてしまいますので、その分の納税済みの贈与税は控除することが、出来ます。
また、未成年者や障害認定を受けられている方については、年齢に応じて、軽減措置があります。
他方、配偶者や一親等の血族以外の方(例えば兄弟姉妹や甥姪など)が相続等により、財産を取得した時は、cで出した各人の金額の20%の課税加算があります(代襲相続による孫は含みません。)。
以上が、概略です。いずれの場合でも、細かい規則があったり、例外があったりしますので、正確なところは、必ず、弁護士、税理士等の専門家にご相談下さるのが良いと思います。