サムスンVSアップル 標準的特許に関する攻防―ビジネスの現場の意見はどうか?
1月24日、スマートフォン等に関する特許を巡って、アップル社とサムスン電子が争っている訴訟の控訴審で、日本の知財高等裁判所は、標準規格における必須特許を使わせる際の条件等訴訟の争点について、一般から意見を求めることを決めました。
専門的で過去に判例のない争点について、専門家ばかりでなく業界関係者から広く意見を募集しようというものであり、ビジネスの現場の意見を司法の判断に反映させようとする試みです。但し、知財高裁に対して、直接意見を言うのではなく、双方の代理人が3月24日までに、国内外の専門家から意見を募り、自らの主張立証の資料として裁判所に提出することを予定しているそうです。
一 般に、ある特定の知的財産権が標準化された技術の規格として、必須のものとされた場合、その特許を保有する企業が特許権を振りかざして、標準規格を使用し て製品化を図る他の企業に対して、特許の実施を禁止するようにと脅かしたり、また法外な実施料や理不尽なライセンス条件を要求するという状況が出現しつつ あります。そのような場合、標準的な装備と考えて、開発を進めてきた他の企業はすでに投資した設備投資が無駄になる恐れがあります。消費者にとっては利用 し易く利便性が高まる技術の標準化ですが、特許権利者の権利保護と標準化を阻害される惧れのバランスをどう取るのかが問題です。
業界全般に幅広く使用される標準特許について、その権利の所有企業が「公正、合理的かつ非差別的な条件」で他社に使用することを認める宣言をFRAND宣言(fair,reasonable and non-discriminatory terms and conditions)といい、国際ルールとして定められています。
意 見募集の背景ですが、被告サムスンは、アップル社の再三の要請にもかかわらず、アップル社において、自社のライセンスがFRAND条件に従ったものかを判 断するのに必要な情報を提供することなく、また具体的な対案を示すこともなかったことから、誠実に交渉を行うべき義務に違反したとして、サムスンの特許権 に基づく損害賠償請求権の行使は権利乱用に当たり、許されない旨、一審の裁判所は判断しました。意見募集は、その控訴審裁判の中での出来事です。
意 見を募るのは、重要技術の特許権を持つ企業が「有料で使用させる」と表明したが、交渉不調などで、使用料が支払れないまま他社がその技術を使った場合、損 害賠償請求権を行使できるか、という点のようです。こうした意見に裁判所がどの程度の証拠価値を認めるのか、興味深いところです。<池田桂子>