テレワークの推進に向けて

1 テレワークの必要性高まる

新型コロナウィルス感染防止対策で緊急事態宣言が出され、営業自粛をする事業者や企業が相次ぐ中、組織としての活動を継続しようと、急遽、テレワークの導入を進めた事業者も少なくないと思います。

 

テレワークというのは、従業者が情報通信技術(ITC)を利用して行う事業場外での勤務を言うと考えられますから、在宅勤務のほか、サテライトオフィス勤務、ノートパソコンや携帯電話を利用して選択した場所で業務を行うその他のモバイル勤務などが、それに当たります。

コロナウィルスの感染拡大リスクを回避するだけではなく、通勤時間などの移動時間を節約するなどの業務の効率化から、今後もテレワークを維持、推進していこうとの働き方の変更も議論されているところです。

 

テレワークを導入しやすいかどうかは業種により異なると思いますが、リモートも休業もできない、業種の代表例として、医療、福祉関連のような社会的なインフラ事業者が思い浮かびます。LINEリサーチによれば、テレワークが導入しやすいIT関連企業が73%と高い結果で、次いで金融業・保険業で58%、また学校・教育法人、卸売業・商社、不動産業が40%以上と続いています。困難な業種として、医療、福祉関連、飲食業・飲食関係、運輸・運送・倉庫業は2割を切る実施率とのことです。

 

2 テレワーク就業規則の策定について

多くの企業では就業規則は変えず、付則としてテレワーク勤務規程を作成しているところも多いと思われます。週に1、2日程度の在宅勤務であれば、勤務制度を大きく変える必要はない、またモバイルワークの場合は、外出規程をそのまま適用する企業も多いと思います。

しかし、改めて考えてみますと、ICT情報通信技術を活用し、時間や場所に制約されない働き方を柔軟に取り込もうとするならば、就業規則もこれに応じて見直すことも必要でしょう。

テレワークを導入する場合には、テレワークを命ずることに関する規定を就業規則に定める必要があります。これに関する労働時間や通信費などの負担に関する規定も含まれます。

在宅勤務規程については、厚生労働省から「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」が公表されていますので参考になさってください。

https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf

 

通常の労働時間制では、一日8時間、一週40時間(労働基準法32条)の規制がありますが、テレワークにも適用され、オフィス勤務と同じ扱いです(但し、常時10人未満の従業員を使用する①商業、②映画・演劇(映画の製作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業について1週は44時間)。同様に、時間外や休日労働についても上司からの命令があった場合に可能で、その場合は会社側は通常の勤務と同じように時間外労働や休日労働の割増賃金を支払うことになります。

 

ちなみに、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定をすることが難しい場合には、所定の労働時間を労働したものとみなす「事業場外みなし労働時間」制度を適用することが考えられます。この制度の導入は、労働者の通信機器が使用者の指示では常時通信可能な状態になってはいないことを前提とします。

 

テレワーク制度を採用する場合には、業務の開始及び終了の報告、連絡体制、通勤手当など、在宅勤務であるからこそ特に決めておかなければならない点があると思います。

 

3 勤務環境の整備を

テレワークはフレックスタイムなどとは違い、制度や勤務時間を変えるだけでなく、①環境を構築する必要がある、②セキュリティ―対策をとる、③勤務時間を把握する、④仕事の評価をどうするのか、などの課題があります。

また、それ以前に、データの電子化、ハンコ(判子)文化の見直しなどがあります。

 

4 情報管理体制の整備も

情報管理体制に問題があれば、従業員の過失によって、情報漏洩が発生し第三者に損害を与えたときに、使用者責任(民法715条)が問われ、裁判例もあります。テレワークの実施のために、業務データを持ち出したり、社外利用するについての社内規程の整備をすることが欠かせません。データを重要度に応じたレベルに分け、取扱い方法について定期的にチェックしたり研修したり、パスワードや多要素認証など通信セキュリティ―に関する課題も重要です。システムやデータの取扱要領が有名無実化していないかの点検も怠らないように気を付けたいものです。

<池田桂子>