商標等の「商標的使用」は許されるか、-「商標としての使用」を比較して-

商標は、事業者が、自らの取扱い商品や役務(サービス)を他人のそれらと区別するために商品または役務について使用する標識をいいます。商標は、こうした自他を識別する機能だけではなく、出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能を有するもので、事業者はその維持に多額のコストを投じています。そのため、その社会的、経済的な有用性に注目し、登録された商標には、商標権として、これを権利として保護し(商標権)、また、登録されていなくても、著明又は周知な商品等表示については、これと同一ないし類似の表示の使用が禁じられており(不正競争防止法)、他人がこうした商標、表示を使用した場合には、権利者から、その差止、損害賠償を求められたり、場合により、刑事事件として刑事罰を受けることもあります。

 

但し、この場合には、登録商標や表示が自他識別機能、出所表示機能を果たすような態様で使用されること(商標的使用といいます。)が必要であることが、判例上、また、商標法上明文化されています(同法26条1項6号)。

今回は、他メーカーの浄水器にのみ使用出来る交換カートリッジを仮想店舗で販売している業者が、そのメーカーから、商標権侵害等を理由にその差止等を求められた事例をご紹介して、「商標としての使用」について考えてみたいと思います(知財高裁判決 令和元年10月10日、裁判所のウェブ上(https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/074/089074_hanrei.pdf)で判決が紹介されております)。

 

原告(X)は、浄水器等の製造・販売を業として、「タカギ」という商標を有し、それを商品等に表示をしており、被告(Y)は、前述の通り、楽天市場内の仮想店舗で、Xの浄水器のみに使用できる交換カートリッジを販売し、Yは、HTMLファイルのタイトルタグ及びディスクリプション・メタタグに「タカギ」を含む以下のような記載をしていたものです。

はじめの記載は、

「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ・・・。※当該製品は、メーカー純正品ではございません。」

その後、記載の内容が変更され、

「タカギに使用出来る取付互換性のある交換用カートリッジ・・・。※当該製品はメーカー純正品ではございません。」

さらに、再変更され、

「タカギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある交換用カートリッジ」

という、いずれも登録商標である「タカギ」を含む記載があります。

その結果、「タカギ カートリッジ」等と検索をすると、タイトルタグの一部がタイトルとして表示され、楽天市場にはタイトルの横にYの商品の画像が表示され、グーグルでは、メタタグの全体が表示されていたものです。

 

これに対して、知財高裁は、はじめの記載は、Y商品の出所が、Xであると示すもので、違法なものとして損害賠償請求を認めています。ところで、Yの表示には、「取付互換性のある」とか「当該製品はメーカー純正品ではございません」といういわゆる打消し表示ないしそれに近い表現があり、カートリッジのメーカーがXでないことを表示しているのではないか、という疑問があります。前者については、裁判所は、メーカーが同じ商品間でも「互換性」という語は用いられていて意味が明確ではなく、後者についても、わかりにくい記載で需要者が注意深く読むとは限らず、また、当該記載が末尾に記載されて、常に需要者に認識されるとはいえないと判断しました。

 

ところが、変更後や再変更後の記載については、カートリッジの出所がX(タカギ)であることを表示したものとはいえないとして、請求を認めません。 一見すると、変更前後で、表示に大きな差は認められない様にも思いますが、判断が分かれたのは、なぜでしょうか。それは、変更後の表示は、「タカギ」という3文字の後に「に」あるいは、「の」という助詞が付加されている点です。

 

この「に」や「の」が入ることで、カートリッジがX製の浄水器に使用できるものであるという商品内容としてひとまとまりの文章として理解出来るということです。この場合には、需要者としても、この表現では、販売している商品の出所が、「タカギ」であることを表示したものとは言えないという解釈です。

 

確かに変更前の記載は、メーカー純正品と自己製品との垣根を微妙にあいまいにしていることがあり、その点を狙っていた節もありますが、やはりその点を裁判所は、見逃さなかったということでしょうか。「商標的使用」の限界事例としてご紹介します。

(池田伸之)