フリーランス保護法(正式名称:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)について-その②
フリーランス保護法については、私のブログ(令和5年11月1日付)で法律の内容についてのご説明はしました。同法については、本年11月に施行予定とのことで、正式の施行日は、未定です。
本法の内容については、上記の私のブログを見て頂くことにして、今回は、この法律の適用対象となる「特定受託事業者」とはどういう人なのか、労働者とはどう違うのか(いわゆる「なんちゃってフリーランス」の問題)について、取り上げてみたいと思います。
2021年に公表されたフリーランス・ガイドラインによれば、
「フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、労働関係法令の適用に当たっては、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」かどうかを判断する。労基法上の「労働者」と認められる場合は、労働基準法の労働時間や賃金等に関するルールが適用される。」
とされており、契約書が、「請負」「準委託」といった独立した事業者間の契約の形式をとっていたとしても、その業務の実態が「雇用」関係である場合には、フリーランス保護法の適用はなく、「労働者」として、労基法その他の労働法制の適用があるということです。
したがって、労働者であるかどうかをどのように判断するかが、キーポイントとなり、これについては、学説や裁判例等、諸説入り乱れている状況ですが、概ね労働者の判断基準については、以下のように整理されます。
(1)「指導監督下の労働」といえるかどうか
・仕事の依頼や指示について、それを拒否する事由があるかどうか。
・業務遂行にあたっての指導監督を受けるかどうか。
・勤務場所や勤務時間に関する指示があるかどうか。
・労働提供について代替性があるかどうか。
(2)報酬が労働に対する対価性が認められるかどうか、
(3)その他、特定の相手の間に専属性が認められるかどうか、
採用の経過、公租公課はどちらがもつのか、等
特に(1)の点が重要です。労災の適用があるかどうかの事例ですが、以下にご紹介します(横浜南労基署長(旭紙業)事件、最高裁平成8年11月28日判決、この判例は、裁判所の裁判例検索サイトで見ることが出来ます。)。
トラックの積み込み運転手が、積み込み作業中に負傷した場合に、労災保険が給付されるかどうかが争われた事例で、運転手は、専属的に当該会社に運送業務に携わっており、会社の運送係の指示を拒否する自由はなく、毎日の始業、就業時割は、運送係により事実上決定されていたこと、運送料が基準価格よりも1割5分低く設定されていた等労働者性を認める要素がある一方、運転手が業務用としてトラックを自ら所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事し、会社側は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、業務遂行に関し、特段の指導監督をしていなかったこと、時間的、場所的な拘束の程度も一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、会社の指揮監督の下で業務を提供していたと評価するには足りないとして、労働者ではないとしております。
フリーランスには、労働者保護のための法制、すなわち、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等の適用がなく、労働者とフリーランスとの差は大きく、フリーランスとして、仕事を委託する、あるいは、受託する場合には、契約書の文面や条項が全てではなく、業務の実態に注目して判断されることを念頭において対応をすべきものということが言えます。
フリーランス保護法や労働規制に関する相談は、池田総合法律事務所で取扱いをしておりますので、何かお困りごとがございましたら、是非、ご相談下さい。
(池田伸之)