中古住宅購入上の注意点

東京ではオリンピックをにらんで不動産価格の上昇が中古マンションにも及び、その取引量が増えているということです。ところで、日本は欧米に比べて、従来から、中古住宅の取引は活発ではなく、築年数が20年も超えると、売買にあたっては建物部分はほぼ無価値となるばかりか、取毀しの費用分だけのマイナス資産となってしまっているのが実情です。

 

他方で、人口減を迎え、住宅の1割程度が空き家となっているのが実情で、最近、住宅地でも放置されて荒れた家も増え、「売家」の表示のある住宅がなかなか売れていないのも、皆さんも気がつかれていると思います。

 

そこで、政府はこうした中古住宅の市場活性化のために、欧米では広く普及する住宅診断を義務化する方向で検討に入っているということです。

 

現在でも、「既存住宅売買瑕疵保険」というものがあり、中古住宅の診断と保証がセットになっており、住宅の基本性能について、専門の建築士による検査全般が保険加入の条件となっており、後に瑕疵が発見されれば、保険で修理費がカバーされるもので、安心して住宅の取得ができます。

こうした考え方をさらに広げていこうというものです。

 

中古住宅の売買の場合、取引の実情として、不動産仲介業者によって内部のシミ、ドア等の開閉の不具合、ひびわれの確認、付帯設備の稼働状況等を確認し書面化(「付帯設備及び物件状況確認書」)されることが多いのですが、そこで指摘されなかった事項については、後日、売主や不動産業者に責任を問うことはできないのでしょうか。

 

中古住宅売買の場合、「現状有姿」売買といって、不動産のあるがままの状態の売買であり、経年変化に伴うものは、買主の方も承知しているということで、指摘がなかったとしても、責任を追及していくことは難しいでしょう。

 

しかしながら、建物の安全性や、虚偽の説明に起因したり、重大な瑕疵について売主や仲介業者が承知していながらその説明をしないような場合には、中古住宅といえどもその責任を追及していくことは可能です。ちなみに、シロアリによる土台浸食により、構造上の耐力に欠け、危険性があるとして、築21年を経過した建物の現状有姿売買につき「瑕疵」があるとした裁判例もあります(東京地判H18.1.20)。

 

物件自体の不具合は、買主も注意してチェックをしますが、意外と盲点となっているのが、中古マンションにおける修繕積立金です。積立金が不足し、新築後、10年から10数年後に行われる大規模修繕さえ、借り入れに頼るようなマンションが増えています。他のマンションと比較して修繕積立金が安い場合は要注意です。目先のことだけでいえば、修繕積立金は安い方がいいわけですが、修繕に対応出来る分の積立がなければ、それにマンション自体の資産価値にもはねかえってきて、いざ売却しようとしても、売れない、相当の減額をしなくてはいけないということになってしまいます。

 

また、過去のメンテナンスの履歴、管理組合の規約や、売主の処分の理由(上下左右の居住者とのトラブル等が潜在していることもあり。)、等も、業者などから十分に聴き取りすることも必要でしょう。(池田伸之)