交通事故の賠償請求

今回は、下記の交通事故の賠償請求に関し、Q&Aでご説明します。

・内縁関係の妻は交通事故で死亡した夫について賠償請求ができるかどうか

・相続放棄と交通事故の賠償請求について  

 

 

① 内縁関係の妻は交通事故で死亡した夫について賠償請求ができるかどうか

Q:夫は、亡くなった先妻との間に子どもが2人おり、いずれも成人して独立しています。私は後妻ですが、事情があって入籍しておりません。私は無職で、夫の収入で暮らしていました。先般、夫が交通事故で死亡しましたが、私には事故の賠償金はもらえるのでしょうか。

 

A:あなたは、内縁の妻ということで、相続権はなく、相続人は先妻の子どもたち2人ということになります。但し、夫の収入によって生計を立ててきた内縁の妻については、判例上、将来の扶養利益を失ったということで、損害賠償請求権が認められていますので、被害者の収入の範囲内で、現に、扶養されていた金額を認定して、これを基に、被害者の稼働期間内で現実に扶養を受けられたであろう期間分(但し、中間の利息は控除します)が賠償として認められます。

この場合、相続人への賠償金の支払いにあたっては、内妻へ支払う分を除いた残りが支払われることになります。

 

② 相続放棄と交通事故の賠償請求について

Q:夫は、多額の負債を抱えて、交通事故で死亡しました。私は無職で、夫の収入で生活をしていました。私は、相続の放棄をしました。私は、事故による賠償金は、相続放棄をしているので、受け取れないのでしょうか。

 

A:相続放棄をすると、相続人であるあなたは、相続人の立場としての賠償を受けることはできません。しかし、民法は、死亡被害者の父母、配偶者、子に対し、遺族の固有の慰藉料を認めています(同法711条)。また、判例上も、被害者の扶養を受けていた妻等について、相続放棄をしたときであっても、加害者に対して、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができる、とされています。したがって、被害者の逸失利益が、そのまま遺族の扶養利益となるわけではありませんが、扶養者の生前の収入、そのうち、被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者の各人の割合、扶養の存続する見込期間等に応じて、一定範囲で賠償が認められることになります。(池田伸之)