会社の機関設計 「監査等委員会設置会社」という選択について

監査等委員会設置会社は、2014年(平成26年)の改正会社法により導入された機関設計です。上場を目指して、その準備を進めていく過程で、この頃、よく耳にします。またすでに上場している会社においても監査役会を廃止して、監査等委員会設置会社に移行する会社が増加している傾向があるように思います。2022年7月の東京証券取引所の状況では、監査役会設置会社が全上場会社の60.7%を占めるものの、監査等委員設置会社は36.9%で、前年よりも増加しています。

取締役らの経営方針の決定と執行を監査する監査役の制度は、幾度かの会社法の改正で機能強化が図られてきました。日本の企業においては、これまで、取締役会は監督ではなく意思決定の場であり、また、取締役は従業員が長年の勤務の先に昇進する場であると認識されていた面も強いと思います。しかしながら、近年、コーポレートガバナンスの議論が進展し、監査役ではなく、取締役会や取締役による監督をガバナンスの中心において機関設計を行うという考え方がとられるようになりました。

監査等委員会設置会社においては、監査役でなく、社外取締役を中心として構成される監査等委員会が取締役の職務の執行の監査を担います(会社法399条の2第3項1号)。監査等委員は、取締役として、代表取締役等の業務執行者の選任、解任、をはじめとする取締役会決議における議決権があり、監査等委員会は株主総会において代表取締役等の選任、解任、辞任や報酬について意見を述べる権限を有しています(会社法342条の2、361条6項)。すなわち、監査に加えて、監督機能を果たすことが予定されています。
監査等委員会設置会社では、取締役の過半数が社外取締役であるか、定款に定めがある場合には重要な業務執行の決定は取締役に委任することができます(会社法399条の13)。会社法上、監査等委員会設置会社では、常勤の監査等委員の選定は義務付けられてはいないのですが、大半の場合、やはり常勤者を選任しています。また、監査等委員会設置会社は、大会社であるか否かに関わらず、会社法の機関である会計監査人の設置が義務付けられています(会社法327条5項)。これに対して、監査役会設置会社は、大会社でなければ会計監査人の設置は義務付けられていません。上場後は別として、上場会社は会計監査人の設置の必要があるため(上場規程)、上場段階では、違いがあるということになります。

監査役会設置会社では、取締役3名以上、かつ、監査役3名以上の役員により役員が構成されることが求められています。一方、監査等委員会設置会社では、業務執行権を持つ取締役1名以上、かつ、業務執行権限を持たない監査等委員たる取締役3名以上により取締役会を構成するとされており、最低、4名の取締役のみ(監査役は不要)で足りるという点で、準備がしやすいという特徴があるように考えられているように思います。

もっとも、監査役会設置会社と監査等委員会設置会社とで、機関設計の優劣があるというのではないと考えられます。組織をどう動かすのか、その機動性の確保と構成員による監督、監査により透明性、妥当性、適法性などを確保している姿勢を会社の成長スピードや発展方向において、よく検討し、幅広く有用な経営に資する人材を配置できるかにかかっています。
上場準備に向け、事業規模の拡大や投資を呼び込む経営方針をスピード感を持って議論を進めるには、機関設計も重要なポイントです。

<池田桂子>