労働審判の使い勝手は?

平成18年4月に労働審判制度がスタートして4年半が経過しました。

 

従来、労働関係のトラブルで、裁判所が関わっていたのは、通常の訴訟と仮処分でしたが、長期化して解決にならないというのが現状でした。

この制度では、裁判官と専門的な知識を持つ2名の労働審判官から構成される労働審判委員会が、3回以内の期日で、調停による解決を試み、調停が成立しないときには、事案に即した解決案を示します。平成18年には877件だった申立も、21年には3468件。都市圏で利用が増加しています。

 

リーマンショック以降、利用件数は大幅に増加しました。雇用終了などを争う地位確認請求事件が半数を占めています。賃金や退職金の請求事件がその残りの大半を占めています。通常訴訟では概ね1年以上の審理期間を覚悟しなければならなかったのですが、労働審判では、申立から終了までは平均75日。迅速な解決が図られているといってよいと思います(審判に異議があれば通常訴訟に移行も可能です)。

 

労働者にとっては、雇用保険の給付は大体90日から330日以内(3ヶ月から11ヶ月)なので、待機期間を入れても、雇用保険の受給期間内に労働審判なら解決が可能ということになります。

 

本人申立もありますが、当事者双方とも80%以上が弁護士を代理人として選任しています。短期間のうちに、証拠を選択しながらすべての主張をしなければならず、調停での要求額について他の事案の解決水準や事件の性質、もちろん法律論なども主張し、和解案に対しても言い分を用意しなければなりません。通常訴訟とは異なり、駆け引きなしに、主張・証拠を1回きりで全部提出することを求められるので準備は大変です。法務部・人事部の考えているよりも、突っ込んだ現場の実情が要求されるケースも少なくないようです。

 

日弁連が行った当事者アンケートでは、この制度を利用した当事者本人の満足度は62%です。
調停成立が7割、審判が出されたうち4割が確定、8割が解決されているようですから、会社側でも、非公開のこの制度を利用して解決するメリットはあると言うことができます。

 

係争利益の小さな紛争は、都道府県労働局の相談や助言、あっせんや簡易裁判所での少額訴訟を利用する方法もありますから、紛争内容を吟味して、どの解決方法を利用するのか、考えてみることをお薦めしますが、労働審判は少しずつ定着してきているようです。(池田桂子)