労働者派遣法の改正でどう変わるの?

平成20年のころ202万人であった派遣労働者数は、23年6月には137万人になるなど減少傾向にあり、派遣事業の売り上げも平成20年の7.8兆円から22年には5.3兆円に減少しました。

 

昭和60年に制定された労働者派遣法は、企業や労働者の多様な働き方に対するニーズもあって、昭和60年以降、適用対象業務の自由化がはかられた時期もありましたが、さまざまな問題が浮上して、平成20年以降検討がなされ、24年春に制定、公布された今回の改正法は24年10月1日から施行されました。

その改正点を紹介します。

 

 

1 日雇い派遣の原則禁止 

原則禁止されたのは、日雇い派遣であり、直接雇用による日雇い就労は禁止されていません。

日雇い派遣の例外となる業務があります。

専門的な知識や技術又は経験を必要とするソフトウェア開発や機械設計、事務機器操作、通訳・翻訳、秘書、調査、財務処理、研究開発、広告デザイン、セールスエンジニアの営業・金融商品の営業などです。

日雇い派遣禁止の例外となる者があります。

60歳以上の者、雇用保険の適用を受けない学生、年間の生業収入が500万円以上の者(いわゆる副業)、生計を一にする配偶者等の収入により生計を維持する者であって、世帯収入が500万円以上の者

 

2 グループ企業内派遣の8割規制

グループ企業の派遣会社がグループ企業に派遣する場合の割合は8割以下にされます(新法23条の2)。会社の親子関係は連結決算の範囲内で、また、連結決算を導入していない場合は、外形基準-議決権の過半数を所有、出資金の過半数を出資等―を基準として判断されます。全派遣労働者(定年退職者を除く)グループ企業での総労働時間が全派遣労働者の総労働時間の8割以下となるようにしなければなりません。

 

3 離職後1年以内の派遣労働者派遣の禁止

離職した企業に労働者を派遣することを許すと、労働条件の切り捨ての可能性が生じかねないので、離職した派遣労働者を離職後1年以内に離職前事業者へ派遣労働者として派遣することを禁止し、派遣先に直接雇用を促そうとしています。

 

4 待遇に関する事項等の説明 / 派遣料金額の明示

新法では、雇い入れ時、派遣開始時及び派遣料金変更時において、労働者本人の派遣料金額又は所属事業所の平均額のいずれかを明示する必要があります。

 

5 マージン率等の情報提供

派遣料金と賃金との差額(いわゆるマージン)のほか、教育訓練費や法定福利費、法定外福利費などの情報提供が、改正法施行後に終了する事業年度分から速やかに公表する必要があります。

 

6 労働契約申込みみなし制度

違法派遣と知りながら受け入れている派遣先(違法派遣であることを派遣先が知らず、かつ、過失がない場合を除きます)は、派遣先が派遣元に示した労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす制度が新設されました。直接雇用の申し込みをしたことになります(40条の6)。

 

今回の改正では、マージン率の明示が義務付けられ、派遣社員1人当たりの平均派遣料金と平均賃金額を使ってマージン率を計算し、年1回、インターネットや事業所での備え付けの資料などで情報提供されることになります。マージン率を比べれば、派遣会社の利益状況がわかり、各社の比較が可能となるはずです。もっとも教育訓練制度にどのくらい配慮して力を入れているかなども注目すべきでしょう。派遣という働き方を望んでいる人たちに必要な情報が届けられ、また、企業の姿勢もこれに応える方向へ進んでいくことが望まれます。(池田桂子)